日本電信電話(NTT)は、「NTT R&Dフォーラム2020 Connect」において、落雷位置を高精度に予測する技術と雷エネルギーを地上に流す「誘雷ドローン」を組み合わせることにより、人や設備を落雷から守る技術を開発していることを明らかにした。2022年から自然環境での実証実験を開始する予定で、2030年ごろの実用化を目指している。
日本電信電話(以下、NTT)は、初のオンライン開催となった技術イベント「NTT R&Dフォーラム2020 Connect」(2020年11月17〜20日)において、落雷位置を高精度に予測する技術と雷エネルギーを地上に流す「誘雷ドローン」を組み合わせることにより、人や設備を落雷から守る技術を開発していることを明らかにした。2022年から自然環境での実証実験を開始する予定で、2030年ごろの実用化を目指している。
同技術の開発は、NTTで通信設備を落雷被害から守る技術を開発している部署が手掛けている。「これまで開発してきた技術は、通信設備に落雷があったときに適切な対応をして被害から守るためのものだった。つまり、雷が落ちることが前提になっていた。今回の技術は、雷が落ちる前に何とかできないか、という考え方が背景にある」(NTTの説明員)という。
技術開発の核になるのは、落雷位置の高精度予測と、落雷や風雨に耐えて一定レベルの高度を安定して飛行できる誘雷ドローンの2つだ。落雷位置の高精度予測は、NTTが取り組みを進めている「デジタルツインコンピューティング構想」などをベースとしたシミュレーション技術を活用するとともに、大学との共同研究も進めている。
誘雷ドローンは、ロボットベンチャーのアトラックラボと開発を進めている。2020年12月には、電力中央研究所と共同でドローンの耐雷性能などに関する評価を実施する予定だ。誘雷ドローンに落雷した雷は、ケーブルを介して地上に流す必要がある。誘雷ドローンによって落雷を高精度に防ぐには数百mから1km以上の高度を飛行しなくてはならず、その高度と同じ長さのケーブルを用いるためにはケーブルの軽量化なども求められるという。
なお、開発の構想の中では、誘雷ドローンなどを運用するための電力も雷エネルギーで賄うことも検討している。これについては、誘雷ドローンから伝わる落雷エネルギーを、地上の雷充電車に搭載した超高耐圧キャパシターなどに充電することを想定している。
落雷被害は国内だけでも年間1000億〜2000億円の規模があり、死者も年間で10人以上出ているという。開発中の技術により、これらの被害を未然に防ぎたい考えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.