前回のナイロン66供給不足のころから、DSMはヘキサメチレンジアミンではなく1,4-ジアミノブタンを使用する代替材料の提案を強化している。供給が不安定になりやすいヘキサメチレンジアミンの影響を受けにくいだけでなく、1,4-ジアミノブタンがDSMのコントロール下で製造されることから安定供給が可能だという。
DSMではPA66の代替材料に加えて、PA6TとPA6I、PA610とPA612の代替材料もラインアップに持つ。PA66の代替材料であるPA46やPA410の供給リスクについて尋ねると、高雄氏は「現在引き合いが多く、ナイロン66などの代わりが欲しいというニーズに対応するのが難しくなっているところだ」と答えた。
代替材料を使うには幾つかの準備も必要だ。例えばPA66からPA46に単純に置き換えることは難しく、「代替材料は近い性質を持っていても別の素材だ」(高雄氏)ということを理解する必要がある。
DSMはPA66の代替材料を複数持つが、それぞれ耐熱性や耐環境性、耐久性、成形加工性が異なっている。そのため、高雄氏は「われわれの製品にはPA66の上位互換となるものもあるが、性能だけでなくコストも上がる場合もある。最適な製品を選ぶには、最終製品の要求を踏まえて素材に求める特性を把握する必要がある。自動車のように開発スケジュールが長い場合は、急な材料変更が難しい。中長期的な目線でさまざまなサンプル材料をテストしておくことが、再び起きうる供給不足のリスクへの備えとなるのではないか」と説明する。
高雄氏によれば、今回のような調達リスクに強い会社は業種や地域を問わず共通点があるという。「エンジニアや購買担当などの現場レベルを超えて、材料メーカーと情報交換する会社は行動が早い。仕入れ先であるサプライヤーで何が起きているか、サプライヤーの事業に関連した規制の動向がどうなっているか、販売先の立場から詳細に漏れなく把握することは簡単ではない。サプライヤーは自分自身のことなので当然、グローバルにきめ細かく情報を把握している」(高雄氏)。
また、「さまざまなイベントが起こりうることを前提にしている企業は変化に強い。自然災害だけでなく、環境規制も短期間で大きく変更されることがある。規制が課されるまで行動しない企業は規制が決まってから対応に追われるが、外部環境で何かが起きる前に自分たちで戦略を決め、その方針に基づいて調達しているようだ」(高雄氏)。
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