人手作業のデータ化、ポイントは「自然に自動で」:いまさら聞けないスマートファクトリー(6)(3/3 ページ)
「自然な動作の中」から「自動で取得する」という意味で重要になるのがトリガー設定です。
「自然で自動」といっても、人は自由に動くわけで、どういう形にすべきか悩みどころなんですよね。
そうね。でもそこは割り切りが必要ではないかしら。何でもかんでもデータ化するというのは現実的ではないわ。古い機械からのデータ取得と同じで、まずは「欲しい情報が何か」を考えて、それと相関関係のある作業を見て、その中でトリガーとなる点を見つけるという順番かしらね。
いつも決まったホームポジションから動作を始めるのであれば、近接センサーなどでその位置についた時を作業開始時にし、次にその位置につくまでの間を作業時間と考えることができるわね。
同じようにデジタル作業指示書を使っているのであれば、作業指示のページ送りをトリガーにするケースもあるわ。積層信号灯の情報をトリガーにするという考え方もあるわね。いずれも作業員は余計な動作をしなくてもよいという点が特徴ね。
なるほど、普段行っている動作の中で、トリガーとして取れそうな場面を探すわけですね。
データを分析して知見を導き出すためには、一定の粒度や基準が恣意的な要素なく集められることが重要になるわ。そういう意味では、作業者の負担を増やすというのは抜け漏れも発生するし、ノイズとなる要素を増やすことにもなるので、良い手とはいえないわ。「自動的に取得できている」という仕組みが必要なのよ。
そういう意味でも前回も話に出ていた映像や音声をトリガーにするというのも有効だということですね。
そうね。映像を撮影していて、立ち位置や手の位置をトリガーにしたり、骨格情報などの動きの内容をトリガーにしたり、機器の設置などの負担は小さく、さまざまなトリガーを設定できる可能性があるという点で映像や音声情報は期待が大きいわね。
なるほど、よく分かりました。ちょっとやり方を変えて、自然に自動でデータが取れる仕組みを考えてみます。ありがとうございました。
スマート工場化のさまざまな取り組みが「データの活用」であるということは事実ですが、以前から工場の中ではさまざまなデータが活用されてきました。筆者としてはこれまでと異なるもう1つの要素としてあるのが「自動化」だと考えます。工場で自動化というと多くの場合が、制御やロボット、専用機器などの自動化を想像すると思いますが、データの活用も自動化することがスマート工場化の大きなポイントだと考えています。例えば、従来手書きで記録され、システムに手で入力されていたような部分を自動で行えるようにすることです。そういう意味では、作業データの取得についても人手による作業を介さずに自動で取得できるようにするというのが、重要だと考えています。
さて今回は前回も触れた「人手によるデータ取得」についてさらに掘り下げて解説してきました。次回も、製造現場において失敗するパターンや見過ごされがちなポイントについてさらに掘り下げたいと考えています。
≫連載「いまさら聞けないスマートファクトリー」の目次
- 古い機械や人手作業、データ化されていない情報をどうスマート化すべきか
成果が出ないスマートファクトリーの課題を掘り下げ、より多くの製造業が成果を得られるようにするために、考え方を整理し分かりやすく紹介する本連載。前回から製造現場でつまずくポイントとその対策についてお伝えしていますが、第5回では、「データ収集」についてのアプローチと、データ化が難しい部分の対策について解説していきます。
- スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。
- なぜ工場でネットワークを考えないといけないのか
インダストリー4.0や工場向けIoTなどに注目が集まっていますが、そもそも工場内のネットワーク環境は、どのように構築すべきなのでしょうか。本連載では、産業用イーサネットの導入に当たり、その基礎から設備設計の留意点などを含めて解説していきます。
- “不確実”な世の中で、企業変革力強化とDX推進こそが製造業の生きる道
日本のモノづくりの現状を示す「2020年版ものづくり白書」が2020年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2020年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第2回では、“不確実性”の高まる世界で日本の製造業が取るべき方策について紹介する。
- エッジは強く上位は緩く結ぶ、“真につながる”スマート工場への道筋が明確に
IoTやAIを活用したスマートファクトリー化への取り組みは広がりを見せている。ただ、スマート工場化の最初の一歩である「見える化」や、製造ラインの部分的な効率化に貢献する「部分最適」にとどまっており、「自律的に最適化した工場」などの実現はまだまだ遠い状況である。特にその前提となる「工場全体のつながる化」へのハードルは高く「道筋が見えない」と懸念する声も多い。そうした中で、2020年はようやく方向性が見えてきそうだ。キーワードは「下は強く、上は緩く結ぶ」である。
- 工場自動化のホワイトスペースを狙え、主戦場は「搬送」と「検査」か
労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。
- 自律するスマート工場実現に向け、IoTプラットフォーム連携が加速へ
製造業のIoT活用はスマート工場実現に向けた取り組みが活発化している。多くの企業が「見える化」には取り組むが、その先に進むために必要なIoT基盤などではさまざまなサービスが乱立しており、迷うケースも多い。ただ、これらのプラットフォームは今後、連携が進む見込みだ。
- 見えてきたスマート工場化の正解例、少しだけ(そもそも編)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第28回となる今回は、スマート工場化において見えてきた正解例について前提となる話を少しだけまとめてみます。
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