その後2021年1月29日、労働安全衛生庁は、「働く人の保護:職場におけるCOVID-19拡大の低減および予防に関するガイダンス」(関連情報)を公表した。本ガイダンスは、雇用主や働く人が、職場においてCOVID-19に暴露や感染するリスクを特定し、導入すべき適切なコントロール策を決定するのに役立てることを目的としている。
労働安全衛生法上、雇用主には、死亡または重大な物理的損傷を引き起こす可能性があると認識されたハザードのない、安全で健康な職場を提供する責任がある。本ガイダンスでは、以下の通り、雇用主に対して、職場におけるCOVID-19予防プログラムの導入を推奨している。
これに先立ち2020年6月18日、労働安全衛生庁は、COVID-19パンデミックの期間中、ノンエッセンシャルビジネスを再開する雇用主や仕事に復帰する従業員を支援することを目的とした「仕事への復帰に関するガイダンス」を公表している(関連情報)。職場復帰ガイダンスでは、再開のための計画として、以下の3つのフェーズを提示している。
全ての再開フェーズの期間中、雇用主は、基礎的な衛生(例:手の衛生、清掃と殺菌)、ソーシャルディスタンス、病気の従業員の特定と分離、職場のコントロールと柔軟性、特定のフェーズに適切な従業員トレーニングのための戦略を導入すべきであるとしている。
その一方で、職場の安全衛生に関わる監督指導も継続的に実施されている、労働安全衛生庁は、2020年12月31日、新型コロナウイルス感染症パンデミック開始から2020年12月24日までの間に実施した監督結果(監督総件数:295件、違反制裁金総額:384万9222米ドル)を公表している(関連情報)。この期間中、以下のような項目に関する不備が労働安全衛生法違反として指摘されている。
表1は、 2020年12月18〜24日のCOVID-19に関わる労働安全衛生法違反事案一覧を示している。
違反事業所を見ると、医療・介護福祉関連施設が含まれていることが分かる。本連載第63回で触れたように、米国の場合、「エッセンシャルワーカー」の分類には、医療機器に関わる製品ライフサイクルの上流段階から、製造、物流、販売、カスタマーサポート、廃棄に至るまでの業務プロセス全体が含まれる。COVID-19緊急対応下であっても、連邦政府および各州政府レベルの労働安全衛生監督機関は積極的に違反摘発を行っており、米国内で事業を展開する日本企業は注意が必要だ。
その一方で、COVID-19対応で困難な課題を抱える企業や働く人を支援する医療機器/デジタルヘルスのソリューションを開発・提供できれば、新たな市場機会を切り開くチャンスとなるだけでなく、本連載第47回で取り上げた健康関連の持続可能な開発目標(SDGs)や環境、社会、ガバナンス(ESG)投資につながるソーシャルインパクトも期待できる。日本国内では、「働き方改革」や「健康経営」に直結する領域であり、今後の動向が期待される。
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