制御盤内に後付けで予兆保全、高調波センサーとAIを使った設備診断:スマートファクトリー(2/2 ページ)
パナソニックが「AI設備診断サービス」で対象としているのは、モーター駆動による設備内の機械要素部品である。ボールねじ、ベアリング、ギアなどを含む機械要素部品が直接的な診断対象となる。機械としては、これらの機械要素部品が採用されている搬送コンベヤー、搬送ロボット、ファン、ポンプなどだ。「電流の変化を見るため、これらの機械におけるモーターに近い領域での異常であれば検出可能だ。ベルトなどをつなぎモーターから離れると検出は難しいが、ある程度の領域はカバーできる」(パナソニック インダストリアルソリューションズ社 メカトロニクス事業部 営業統括部 課長の粟野正和氏)。
また、顧客ターゲットとしているのは「設備にセンサーを後付け」でき「対象設備を限定せずに診断可能」などちらかといえばライトな異常予兆監視を行いたいニーズを求めるユーザーである。「設備に後付けできる設備診断は、ニーズはあるものの、まだそれほど多くのサービスがあるわけではないため、そこを狙いたい」と近藤氏は述べている。現状では、工場などのエンドユーザーを中心と位置付けているが「機械メーカーが自社の保全サービスに組み合わせるニーズなども聞いており検討は進めていく」(近藤氏)
AI設備診断サービスのターゲット(クリックで拡大)出典:パナソニック
商品構成は、高調波センサーとエッジ子機と親機、Webアプリとなっている。機器の購入とともに、12軸までで月額9万8000円のサービス利用料が必要となる。評価用のサービスパッケージも用意しており、こちらは3カ月で機器やサービスを組み合わせ、12軸までで100万円だとしている。導入決定から稼働までの期間については「200〜300データほどを用意できれば開始できる。1カ月でデータを取得し2カ月目から稼働させるというパターンが多いが、短ければ1週間で使用することも可能だ」(粟野氏)としている。
当面は国内市場中心の展開を行う予定で、今後の目標としては「2024年には予兆診断市場が200億円規模になると見ているが、その内10%くらいのシェアを取りたい」と近藤氏は話している。
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