新型コロナ感染症に振り回された2020年の転職市場。いまだ影響の大きいコロナ禍で、2021年の転職市場はどうなるのだろうか。2020年の振り返りと2021年の見通しについて、転職コンサルタントに話を聞いた。
2020年を振り返る上で、また今もなおさまざまな影響の大きいコロナ禍。しかし日銀短観の近況によれば、製造業の直近2期は回復しているようだ。では、企業の業績と切り離せない転職市場は、これからどうなっていくのか。自動車業界専門転職サイト「オートモーティブ・ジョブズ」を展開するクイックの人材紹介事業本部 自動車チーム マネージャー 関寺庸平氏に、2020年の振り返りと、2021年の見通しを聞いた。
2020年を振り返って、関寺氏は「モノづくり企業が、これから何をしていくかを考えた1年だったのではないか」と話す。ITとモノづくりの境界はますます曖昧になり、モノが単なる「もの」以上の役割や価値を持つ流れは加速している。そういった製造業の変化の中で、業界や企業、あるいは企業内の部門やプロダクトなど、注力すべき領域を見定め、採用も含めた投資に強弱をつける動きが停滞することはなく、むしろ加速したようだ。
採用については「予想よりは良かったと思う」と関寺氏。前回の連載でも述べたとおり、まったく先の読めない状況であった春ごろには採用も見送られてきたが、良くも悪くも見通しが立ってきた10月、11月ごろから、オープンになる採用枠も増えてきている。ただ、満遍なく採用するのではなく、投資すべきと判断された領域でオープンになっていることは言うまでもない。
過去の連載でも度々話題に登っているが、特に求められている人材は、IT、組み込み制御、システムエンジニア、データサイエンティストなど、ソフト系のエンジニアだ。職種によるニーズを大まかに表現すれば、「ソフト系>電気系>メカ系」という図式になるだろう。ビッグデータ、AI、IoTなど、かつては漠然とした将来像だったキーワードについても、何を実現したいのか、そのために何が必要なのかなど、明確化、具体化がこの1年で進み「とがったエンジニアを募集する企業が多くなっている」(関寺氏)という。
求職者側も、4月、5月は漠然とした不安に駆り立てられるように転職を希望する人が多かったが、最近は落ち着きを取り戻している。自社の今後をイメージし、自分の将来を考え「目的意識を持って転職する人が増えてきた」(関寺氏)という。
1回目の緊急事態宣言を皮切りに、オンライン面接が急速に広がったのも2020年の大きな特徴だ。大手企業から取り入れ始めたオンライン面接は、中小企業に広がるまでには時差もあったが、今ではほとんどの企業が実施するようになり、もはや当たり前のスタイルとなっている。オンライン面接の普及は、コロナ禍に後押しされたと言って間違いないだろう。
時間や場所の自由さなど、オンラインならではの良さはあるものの、雰囲気や空気感がモニタ越しでは伝わりにくいなどの課題もあり、直接顔を合わせたり、会社を訪問したりすることの意義を再認識した側面もある。リアルやオンラインでオフィスの見学を実施したり、面接以外でも質問などを受けたりと、柔軟に対応する企業も増えているようだ。
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