さて2021年の転職市場はどうなるのか。「おそらく2020年の状況がしばらく続くことになるだろう」と関寺氏。
ソフト系では、2020年からそうであったように、ソフトやITによって実現したいことが明確になっている企業を中心に、部門横断的な取り組みを推進できるエンジニアの求人が多くなると予想される。同様に、収集されたデータをビジネスにつなげたり、データを活用して効率化したりするために、データサイエンティストなども求められるだろう。こういった上流のエンジニアの一方で、それらをモノづくりに落とし込んでいくための、組み込み制御エンジニアも必要とされることから、関寺氏は「両極端のソフトエンジニアの求人が、根強く増えていく」と予測する。
電気系については、「自分の会社のコア技術が何か、どの領域が強いのかなど、今後どういう技術を伸ばしていくかを考える企業が増えるのではないか」と関寺氏。となると、研究に携われる人、自社技術を引き上げてくれるようなエンジニアの求人が増えると考えられる。
採用枠があるとは言うものの、企業側は「こういう人」という人物像をかなり細かく描いている。「門は狭く、その狭さはますます進む。採用してから育てるポテンシャル採用は、ほぼない状況が続く」と関寺氏。逆の見方をすれば、企業のニーズにマッチすれば、ベテランの方でも転職成功の可能性が大いにあるということだ。
一方で、コロナ対応や今後の成長に向けた業務整理などのために、部門を売却、縮小したり、早期退職を募ったりしている企業もある。その結果、必要な人材が去ってしまうケースもあり、空いてしまったポジションを早急に埋めるために、門を広めに設定することもあるようだ。
これまでの連載でもお伝えしてきたように、求職者は、自分のスキル、強みを磨いておくこと、またスキルの転用、応用の可能性について考えておくことが重要と言える。緊急を要しない転職ならば、自分自身のキャリア形成の観点から、「必要なスキルを身につけてから、希望の職種に転職」というのも1つの選択肢かもしれない。
企業側の採用に対する慎重な姿勢は、今年も続く。しかしこの慎重さは、企業にとっても、求職者にとっても「良い転職にしたい」という思いの現れでもあるだろう。長引くコロナ禍で、今後もオンライン面接は多いと想定されるが、関寺氏は「オンライン面接だけでは求職者も不安だが、企業も同じように不安に思っている。双方にとって転職を成功させるために、事前に確認したいこと、見ておきたいことなどは、企業に申し出て、できるだけ不安要素を減らすことをお勧めする」とアドバイスする。自分を磨き、情報を集め、幸せな転職を目指そう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.