新エネルギー・産業技術総合開発機構と地球環境産業技術研究機構は、香料などの原料となるカテコールを微生物で発酵生産する技術を開発した。スマートセル技術を活用し、初期生産株の約500倍となるカテコール生産濃度を達成した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020年12月2日、地球環境産業技術研究機構(RITE)と共同で、香料などの原料となるカテコールを微生物で発酵生産する技術を開発したと発表した。スマートセル(潜在的な生物機能を引き出した賢い細胞)技術を活用し、初期生産株の約500倍となるカテコール生産濃度を達成した。
今回の研究でカテコールの生産に使用したのは、コリネ型細菌(コリネ菌)という微生物だ。NEDOとRITEでは、2016年度より「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発(スマートセルプロジェクト)」に取り組んでいる。
同プロジェクトで開発した基盤技術を活用し、カテコールを効率的に生産するための代謝経路を設計。これをコリネ菌の細胞内に再現することで、カテコールの高生産株を開発した。
この生産株に複数の基盤技術を活用したところ、生産濃度が段階的に向上した。開発初期の生産株が示した値に比べ、約500倍のカテコール生産濃度を達成できた。
香料の原料や半導体の加工材料として使用されるカテコールは、主に石油を原料として合成している。再生可能資源を原料とする製造法として、植物由来の糖を原料とした微生物発酵法がある。しかし、カテコールを含む芳香族化合物は微生物に対して毒性を示すこと、生産代謝経路が長く複雑といったことから、微生物発酵法による生産は難しかった。
NEDOでは今後、今回の研究成果を先行事例とし、生物機能を活用した高機能な化学品や医薬品などを生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」の実現を目指すとしている。
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