さて、希望年収は伝えるべきなのだろうか。関寺氏は「伝えた方がいい」と言う。特に現在、企業は即戦力を求めていることもあり、しっかり評価して採用しようとしている。対する求職者側も、自分の評価、つまり年収に不満を残すことがないように希望額は伝えた方がいい。
ただし、その年収を希望する理由や、その金額が妥当な評価だと考える根拠なども、同時に示す必要がある。自分の希望を満たし、かつ適切な金額を見いだすには、応募先企業の給与水準や、業界、職種の平均などの情報も必要だ。こういった情報は、エージェントを頼るのがいいだろう。「応募先の企業や業界の情報、現状の年収やスキル、本人の希望など、いろいろな要素を加味して、一緒にすり合わせをしていく。エージェントから企業に対して後押しもできる」と関寺氏。そもそも希望する年収と、業界や企業の給与水準がかけ離れていなければ、企業側の提示額と希望が大幅に違うこともないだろう。
では、希望年収はいつ伝えればいいのか。ベストなタイミングは、オファーをもらってからのようだが、実際には面接で聞かれることもあるだろう。「1回目の面接で、現職の年収を聞かれることはよくある。もし希望年収も聞かれたら、現職の1割増しぐらいまでが妥当」と関寺氏はアドバイスする。
やってはいけないこともある。例えば「年収さえアップすれば、業界も職種も問わない。未経験の仕事でもいい」というような希望は良くない。不安が先行して、とにかく仕事を変えたいという気持ちになっている人もいるかもしれないが、「リスクを増やすばかりなのでお勧めできない」(関寺氏)という。当然ながら、最初の面接で開口一番「希望年収は……」と言ったり、自分のスキルとかけ離れた法外な年収を要求したりするのも、印象が悪くなるだけなのでやめた方がいいだろう。
また関寺氏は「複数の企業を受け、2社以上からのオファーを目指すことをお勧めする」と言う。
1社だけの場合は現職との比較しかできないが、2社以上ならば、現職との比較のほか、転職市場での自分に対する複数の評価を知ることができる。「市場の評価を金額という物差しで見られるのは、転職活動のメリットの1つ。客観的な指標になる」(関寺氏)。複数社からのオファーを得られれば、求職者側が選ぶ余地があることもメリットだろう。
転職先企業を選ぶにあたって、見落としがちなのは福利厚生だ。年収の金額が大きい方が魅力的に見えるかもしれないが、福利厚生も加味して考えると違ってくることもあるからだ。関寺氏は「確定拠出年金、各種手当や資金援助など、特に日本企業は福利厚生が充実していることが多い。長く働くと大きな差になる可能性もあるので、福利厚生もしっかり見た方がいい」と話す。
年収は自分の価値に対する評価であり、同時に生活、将来設計の基盤となるものでもある。仕事に対するやりがいも重要だが、年収もまた重要。納得感のある転職ができれば、モチベーションにもつながるはずだ。
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