アダプティブマシンは、デジタル世代の消費活動とそれを生産する従来型マシンの間にあった障害を解決し、主に4つのベネフィットをユーザー(製品生産者)とマシンメーカーへもたらします。その例を実際の事例を交えてご紹介します。
アダプティブマシンは、リニア搬送テクノロジーによって、独立制御されたシャトルにより、生産性を損なうことなく、その場で製品レシピを変更することができます。レシピ変更はタッチパネルのボタンを押すだけの簡単な操作で、ツールや部品交換、人の介入を必要とせず、完全に自動化されています。さらに、モジュラー設計とデジタルツインを使用して新しい操作をシミュレートすることで、生産ラインを簡単に再構成し、新製品を生産することも可能となります。
アダプティブマシンでは、柔軟性とパフォーマンスがトレードオフになるのを限りなく低減できることが特徴となります。負荷分散された並列処理、製品フローの合流と分岐、完全に同期されたロボット、厳密に時間を決められたシーケンシャルプロセスを、ダイナミックで応答性の高いソリューションに置き換えて、効率性と生産性を向上させることが可能です。これにより、従来型システムよりも、PPM(Product per Minutes)を向上させられます。
アダプティブマシンを活用することで、柔軟なトラックレイアウト、予期せぬ需要急増に対して拡張することが可能です。独立して制御されたシャトルの緊密な同期は、高いスループットと生産性の向上につながります。また、マシンの設置面積をさらに小さくすることも可能です。デジタルツインは、事前に構成を最適化し、将来の要件に簡単に適応することができます。
アダプティブマシンを活用することでマスカスタマイゼーションを実現することが可能となります。マスカスタマイゼーションとは、マスプロダクション(大量生産)の効率性で、カスタム製品を作ることができる仕組みとなります。柔軟性をプログラムにより確保できるアダプティブマシンを活用することで、費用対効果の高い自動化されたマスカスタマイゼーションを実現できます。消費者は直接メーカーにカスタマイズされた、または小バッチサイズのプロダクトを注文できるようになります。
ここまで、製造現場に柔軟性をもたらすアダプティブマシンとはどういうもので、どういう技術によって構成され、どういう利点を生み出すのかを紹介してきました。筆者の所属するB&Rではこのアダプティブマシンを積極的に推進しているのですが、これをテーマとしたセミナーを開催したところ、グローバルで400社、日本からは150社が参加され、製造現場で生まれている課題は世界共通だとあらためて感じました。今回示した技術要素などにより、新たなモノづくり現場への参考になれば幸いです。
小松和幸(こまつ かずゆき)
B&R株式会社セールスマネージャー
日系産業用制御メーカーにて、主に自動車産業向けアプリケーションのシステム営業を担当。2014年にオーストリアのオートメーションソリューションメーカーであるB&R日本法人に入社。スタートアップメンバーとして参画し、OEMセールスマネージャーを経て現職。入社以来、日本の機械および装置メーカーが世界市場で勝ち続けるために価値あるソリューションやテクノロジーは何かを考え、精神一到の気持ちで臨んでいる。
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