「アダプティブマシン」には、以下の4つのテクノロジーが使用されています。
インテリジェントなリニア搬送システムは、アダプティブマシンの核となるテクノロジーです。リニア搬送システムは、トラック上にあるシャトルを個別に自由に制御できます。厳密に事前計画された大量生産品のように順次プロセスを通過するのではなく、製造されるプロダクトによって停止する位置や時間(タクト)を任意に変えることが可能であり、生産に柔軟性をもたらします。
また開いた包装容器から液体や粉末をこぼさずに、シャトルを高速で移動させる制振制御アルゴリズムなどを用いてプロダクトを確実に搬送します。ある生産工程に、より長いタクトが必要な場合には、対象工程を複数設け、並列処理をさせる事も可能です。
高速搬送を実現するアダプティブマシンには、全体をつかさどる「目」が必要となります。従来のマシンでは、搬送システムとビジョンシステムは、完全に別々のコントローラーでそれぞれ制御されていました。しかし、コントローラーおよびソフトウェアの性能向上により、リニア搬送システムとビジョンシステムを1つのコントローラーに統合することが可能となりました。これにより、これまでボトルネックだったコントローラー間の通信速度に依存する遅延も改善できます。
統合型ビジョンシステムを活用することで、生産プロセスにおける問題を早期に発見し、素早い変更を可能にします。例えば、リニア搬送システムで高速搬送されたプロダクトを減速せず検品することを想定します。その場合、不良品は確実に排出ピットへ流し、間違いなくトラック上から排除することが重要です。また、リアルタイムの製品情報トレースが求められるわけですが、統合型マシンビジョンであればこれらが実現可能となります。
生産ラインに最先端の柔軟性を持たせるためには、リニア搬送システムとロボティクスとの間に完全なオーケストレーション(設定・管理および調整の自動化)が求められます。シームレスにつながったリニア搬送システム、マシンビジョン、ロボティクスの3つのテクノロジーが連動することで、リニア搬送システムによって高速搬送されたプロダクトの向き、形状をマイクロ秒単位でマシンビジョンが検出し、その情報を基にロボティクスがプロダクトに合わせて動作を決め、さまざまなプロダクトを柔軟に取り扱うことができるようになります。
また、安全モーション機能(Safe Limited Torque、Safe Speed limited、Safe limited directionなど)をロボティクスへ実装することや、ロボティクスと作業者がより安全に協働できるシステムを構築することなども可能です。
デジタル世代の消費は需要予測が困難です。新しいマーケットニーズを実際のマシンで生産するために、マシンを一から設計し直すことは大きな負担となります。そこで、フィジカル空間にあるマシンとプロダクトの情報、そのオペレーション情報をサイバー空間に送り、サイバー空間にフィジカル空間と同じ状況を作り出し、シミュレーションを行うことができる「デジタルツイン」に注目が集まっています。デジタルツインを用いてリスクを低減し、素早く新たな生産ラインを立ち上げたり、新たな製品に適応したりすることが可能になるのです。
以上のように、4つのテクノロジーがシームレスに統合される事によって柔軟な製造現場を実現するアダプティブマシンが可能となるのです。
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