米国規制当局のDXが医療イノベーションに及ぼす影響海外医療技術トレンド(65)(2/3 ページ)

» 2020年11月13日 10時00分 公開
[笹原英司MONOist]

保健医療DXの要は「クロスエージェンシー」

 本連載第26回で触れたようにHHSは、一貫して保健医療分野の組織横断的な取り組みに注力しており、今回公表した医療IT戦略計画の策定作業においても、25以上の連邦政府機関と連携している。

 このような取り組みの背景にあるのが、一般調達庁(GAO)と行政管理予算局(OMB)が中心となり展開している、「大統領マネジメント・アジェンダ(PMA)」に基づくDX推進施策だ(関連情報)。米国連邦政府は、PMAの展開を加速させるために、組織横断的な「クロスエージェンシー・プライオリティ(CAP)」目標を設定し、「2010年政府業績評価(GPRA)現代化法」(関連情報)で要求される連邦政府業績計画のコンポーネントとして提供している。

 図2は、連邦政府機関全体レベルにおけるCAP目標のカテゴリーを示したものである。

図2 図2 クロスエージェンシー・プライオリティ(CAP)目標のカテゴリー(クリックで拡大) 出典:General Services Administration & the Office of Management and Budget「Cross-Agency Priority Goals Overview」(2020年9月17日更新)

 具体的なカテゴリーおよび構成要素は以下の通りである。

  • トランスフォーメーションの主要ドライバー
    • ITモダナイゼーション
    • データ、説明責任、透明性
    • 21世紀のための労働力
  • 分野横断的な優先領域
    • 顧客エクスペリエンスの向上
    • 品質サービスの共有
    • 低価値から高価値業務へのシフト
  • 機能的な優先領域
    • カテゴリーマネジメント
    • 結果に基づく補助金の説明責任
    • 適正な支払の実行
    • 連邦IT支出の透明性
    • 摩擦のない調達
  • ミッションの優先領域
    • インフラストラクチャ許可のモダナイズ
    • 安全検査、適合性、資格証明の改革
    • 研究室から市場へ

 そして図3は、「トランスフォーメーションの主要ドライバー」のカテゴリーにある「ITモダナイゼーション」のフレームワークを示したものである。

図3 図3 ITモダナイゼーション・フレームワーク 出典:General Services Administration & the Office of Management and Budget「The President’s Management Agenda」(2020年10月30日)

 このフレームワークは、「連邦ITモダナイゼーションに関する報告の機会」「政府機関ITトランスフォーメーションの優先順位」「管理ITの優先順位」から構成される。

 「連邦ITモダナイゼーションに関する報告の機会」では、連邦政府全体のITインフラストラクチャの老朽化が進行する中で、提供するITサービスの変革と、セキュリティへの取り組み状況に関する報告に焦点を当てている。

 「政府機関ITトランスフォーメーションの優先順位」では、資金調達手法に関わらず、一般調達庁のエンタープライズ・インフラストラクチャ・ソリューション(EIS)契約(関連情報)に代表される政府調達コストの低減を掲げている。

 さらに「管理ITの優先順位」では、以下の3点を挙げている。

  • ミッションの有効性の強化
  • 連邦政府のミッションに対するサイバーセキュリティリスクの低減
  • 現代的なIT労働力の構築

 米国連邦政府機関のDXプロジェクトでは、リスクベースアプローチによるサイバーセキュリティ対策や人材育成施策が初期段階から組み込まれるのが一般的だ。

 本連載第41回で取り上げた国土安全保障省(DHS)傘下のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)や、HHS傘下の保健セクター・サイバーセキュリティ調整センター(HC3)の創設の動きも、CAP目標の方向性と整合性が保たれていることが分かるだろう。

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