ソリッドワークス・ジャパンは、オンライン記者説明会を開催し、2020年11月2日から販売開始する「SOLIDWORKS 2021」の新機能および、SOLIDWORKSの設計開発環境にさらなる拡張性をもたらす「3DEXPERIENCE WORKS」の概要を発表した。
ソリッドワークス・ジャパンは2020年10月28日、オンライン記者説明会を開催し、同年11月2日から販売開始する3D設計開発ソリューション「SOLIDWORKS」の最新バージョン「SOLIDWORKS 2021」の新機能および、SOLIDWORKSの設計開発環境にさらなる拡張性をもたらす「3DEXPERIENCE WORKS」の概要を発表した。
SOLIDWORKS 2021の改善と拡張のポイントについては、大きく「製品品質/信頼性/パフォーマンス」「機能拡張」「3DEXPERIENCEプラットフォームへの接続」「その他」に分けられる。その中で、注力したポイントがユーザーが特に重視する「製品品質/信頼性/パフォーマンス」の改善で、その対応の割合はバージョンアップ内容全体のうち58%を占めるという。「今回のバージョンアップは、日々の設計業務を効率化し、製品開発プロセス全体の合理化をもたらす内容となっている。結果的に、製品の市場投入期間の短縮にも大きく寄与できると考えている」と同社 営業技術部 プロダクトマーケティングの滝澤直子氏は説明する。
また、製品ポートフォリオは従来バージョンの「SOLIDWORKS 2020」から踏襲しており、製品設計、電気設計、設計検証、データ管理、コミュニケーション、製造まで広範にカバー。これらに今回の改善と拡張が加わることで、製品開発プロセス全体のパフォーマンスを最大化できるとする。
記者説明会では、SOLIDWORKS 2021の改善と拡張の具体的な内容として、「パフォーマンスの改善」「機能拡張」「Design to Manufacturing」の3つのパートに絞って紹介した。なお、新機能紹介で用いられたテーマモデルは、米Square Robotが手掛けるプラント検査ロボットの3Dモデルが用いられた。
SOLIDWORKS 2021では、より快適な設計環境の実現のために、さまざまな点でパフォーマンスの改善が図られている。その1つが「モデル表示の高速化」だ。グラフィックスパフォーマンスの拡張機能が強化され、フレームレートとレスポンスが大幅に改善された。この拡張機能はCPUではなく、GPUに演算処理させることで描画・表示パフォーマンスの高速化を図るもので、「SOLIDWORKS 2019」から搭載されている。今回のバージョンアップによってパフォーマンスがさらに向上し、ユーザーは拡張機能のオプションをONにすることで、モデル表示の高速化を享受できる。「さらに、この拡張機能をONにすることで、シルエットエッジの表示においても高いパフォーマンスを発揮できる。アセンブリモデルはもちろんだが、図面描画においてもさらなる高速化が図られている」(滝澤氏)。
パフォーマンス改善のもう1つのポイントが「ディテイリングモードの強化」だ。ディテイリングモードとは、図面を開く際のモードの1つで、モデル情報をロードすることなく図面を開くことができるため、大規模図面を素早く開いて編集することが可能(機能としてはSOLIDWORKS 2020で追加)。SOLIDWORKS 2021では、モデル情報をロードせずに編集できる内容の幅が広がっている。例えば、テキストや記号といったアノテートアイテムの編集、破断図の作成、公差寸法の編集などが可能になった。
機能の拡張については、まず「パーツモデリング」の強化が挙げられる。「SOLIDWORS 2017」から3Dデータ形式の1つである「3MF」をサポートしていたが、新バージョンでは3MFに対してグラフィカルな情報を付加できるようになった。具体的には、SOLIDWORKS 2021上で定義したテクスチャーや透明度などの情報を付加した状態で3MFファイルとしてエクスポートできる。記者説明会では、Stratasys(ストラタシス)のフルカラー&マルチマテリアル3Dプリンタ「Stratasys J850」を用いて造形したサンプルを紹介していた。
さらに、新バージョンでは「アセンブリモデリング」に関しても機能拡張が施されている。3D CADの利用メリットとして干渉チェックがあるが、SOLIDWORKS 2021では干渉箇所の情報を、表計算ソフトの「Excel」にエクスポートできるようになった。干渉チェックだけでなく、干渉を発生させている関連部品の修正検討において、3D CADがなくても、Excelベースで関係者と対応の検討が進められる。「従来、干渉チェックは3D CADの画面上で行われていたが、大規模なモデルになると干渉箇所を見逃してしまうこともあった。Excelに書き出すことで修正漏れを防止することが可能となる」(滝澤氏)。
もう1つが「SOLIDWORKS Simulation」に関する拡張だ。解析を実行する際に行うメッシュ作成において、SOLIDWORKS 2021ではメッシュ診断ツールが強化され、新たに「メッシュ品質診断ツール」が追加された。これまでもメッシュ品質の悪い部分を表示する機能は有していたが、メッシュ品質診断ツールでは、それらをハイライトしてリスト化するといったことが可能となる。また、「メッシュヘルパー」機能を追加で利用することで、問題箇所のメッシュ品質を部分的に改善するといったことが半自動的に可能になるという。
Webブラウザベースのビュワー「eDrawings」も強化された。新バージョンでは、測定ツールの使用が可能になった他、組み上がっている製品からパーツを抜き出して、形状や内部を確認するといったことができる。「デザインレビューなどにおいて、実機や試作品を用いることなく、Webブラウザ上でパーツを抜き出して内部を確認したり、隙間の寸法を計測したりといったことがより手軽に行えるようになった。また、測定に関しては、知財や技術保護の観点から、エクスポートする際に管理者側で機能に制限をかけるといったことも可能になっている」(滝澤氏)。
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