ファン設計から学ぶ、CFDを活用した製品改良のアプローチ初心者のための流体解析入門(16)(2/2 ページ)

» 2020年10月07日 10時00分 公開
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 これらの計算結果を基に、羽根車の入口と出口における速度三角形が以下のように求まります。

羽根車の入口と出口における速度三角形 図1 羽根車の入口と出口における速度三角形 [クリックで拡大]

 図1を確認していきましょう。目的の静圧を満たすためには、羽根車の入口と出口において、相対流速が回転面に対して12〜13.4度になるように、翼を作る必要があるということです。今回使用する軸流ファンの場合、翼の表現には弦長と反り率を用います。ここで、反り率をf、弦長をLとしたとき、取り付け角や入口角、出口角との関係は以下のように表現できます。

翼断面中心線の作成 図2 翼断面中心線の作成 [クリックで拡大]

 最大反り位置までの距離を⊿とすると、反り率fは、⊿/Lで表すことができます。また、前述の取り付け角や入口角などとの関係は以下の式で示せます。

解析結果の確認

 これらの数値を用い、3D CADで図3のようなファンのモデルを作成しました。

作成したファンの3Dモデル 図3 作成したファンの3Dモデル [クリックで拡大]

 この3Dモデルに対し、所定の体積流量を与えて計算したところ、以下のような解析結果が得られました。

解析結果 図4 解析結果 [クリックで拡大]

 結論からいうと、おおむね圧力が18MPa弱と計算上の圧力よりも少ない圧力上昇になっています。圧力上昇が小さいのは、翼の前縁と後縁の速度ベクトルの変化が設定された出口角の差よりも小さいということになります。つまり、翼の出口角は計算された角度よりも大きくする必要がありそうです。また、反り角と取り付け角についても同様のことがいえます。

 要するに、計算で求められる値は、ある意味で理想的な状態といえるわけですが、実際のファンの場合、隣り合う翼の影響が相互に関係してきますし、そもそも流体の流れは、翼の形状に完全に一致するわけではありません。また、今回は静圧のみを用いて計算していますが、実際には動圧も考慮しなければなりません。

連載のまとめ

 さて、連載「初心者のための流体解析入門」は、今回の内容をもちまして終了といたします。

 ここまでの内容で、一般的に流体解析でよく扱われるトピックについて一通りカバーしてきました。この連載の趣旨として、理論についてはできる限り触れず、一般的な商用ソフトを活用してどのような解析ができるのか、どのような手順や設定が必要なのかを中心に解説してきました。

 ただ、解析全般にいえることですが、流体解析ではなおのこと、どのような想定をし、どのような解き方、設定をするのかによって、解析結果は意図的にでも、意図せずともいかようにでも変えてしまうことができます。その点も併せてご理解いただければと思います。

 本連載ではあまり触れませんでしたが、流体解析に興味を持たれた方は、ぜひ理論面も含めてさらに学び、流体解析を活用していただければと思います。本連載がそのきっかけとなれば幸いです。 (連載完)

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Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。


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