ただ、詳細の取り組みを進めるにはこれらの粒度、もしくはもっと細かい粒度で考えていくことが必要になりますが、ここまでを一から全て考えて取り組むのは多くの企業にとって、大変かもしれません。そこで、最低限考えるべき粒度として、4つの観点があると考えます。
印出さん、ここまでがっちり組むのは大変ですよ。専務も理解できないんじゃないかな。
いろいろあるけれど、絞り込むと最低限4つの切り口でスマートファクトリーを見ていくことは求められるかしら。
4つまで絞り込めるんですね。
そうね。1つ目は矢面さんが取り組んでいる「製造現場プロセス」の観点ね。2つ目がモノの流れを示す「サプライチェーン」の観点、3つ目が設計などの「エンジニアリングチェーン」の観点、そして最後はこれらの企業価値を示す「ビジネス&経営」の観点ね。
こう見るとありきたりに思えるんですけど……。
確かに、当たり前のことよね。でも、スマートファクトリーを実現するには4つをうまく連携しながら無理なく進めていかなければできないわ。全てがそろってはじめて実現できるのよ。
それはそうですが……。
あとはこれらを同時進行で考えなければならなくなるから、どうしてもスマートファクトリーの話をするときに、それぞれが混ざり合ってしまうのね。そういうのを避けるためにアーキテクチャなどもあるわけだけど、少なくともそれぞれの切り口でどの順番でどのような関係性を持って話を進めるかという考え方は重要だと思うの。
なるほど。専務は「経営&ビジネス」の観点で話をしていて、私が「製造現場プロセス」の視点で話をしていたからかみ合わなかったんですね。「製造現場プロセス」の変革を今後どう他のプロセスと連携させ、経営価値につなげていくのかというロードマップなどを示せばよかったのかな。印出さん、とりあえずは理解できました。もう1度専務と話してみます。ありがとうございます。
頑張ってね。
スマートファクトリーは、関連する部門や範囲が幅広い一方で、それぞれの部門でも変革を進めなければ実現できるものではありません。そのため、どうしても自部門だけで実現可能な矮小化されたPoC(概念実証)ばかりが進められ、その成果が思ったほどは得られないことになっていると見ています。「部分最適で全体最適につながらない」というような指摘もよく耳にします。
全体像の中でどういう意味があるかをイメージすることができれば「今は成果は小さくても今後のデジタル化のためにもここは進めなければならない」というような踏み込んだ実証などにもつながると考えます。少なくとも全体像の中でどういう意味合いがあるのかを意識できれば、全体最適化にもつなげやすいのは間違いありません。
そのためにはまず「誰がどこで何をするスマートファクトリーなのか」を意識し、それぞれの切り口を理解しながら進めていくことが求められていると考えます。
次回は「4つの観点」の中身についてもう少し詳しく紹介しようと思います。
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