SAPジャパンは2020年9月15日、インダストリー 4.0戦略の具現化を支援するグローバル組織「Industry 4.Now HUB TOKYO」を設立したと発表した。
SAPジャパンは2020年9月15日、インダストリー 4.0戦略の具現化を支援するグローバル組織「Industry 4.Now HUB TOKYO(インダストリー・フォー ドット ナウ ・ハブ ・トウキョウ)」を設立したと発表した。
SAPは、インダストリー4.0の発信源であるドイツで中心企業として、これらの動きを推進する企業の1社である。さらに、これらの工場を中心としたインダストリー4.0の動きと、企業全体のビジネス戦略を結び付ける取り組みとして「Industry 4.NOW」を提唱し、現場情報とビジネス情報を組み合わせる意義を訴えてきた。
SAPジャパン 常務執行役員で、SAP アジア太平洋・日本地域イノベーション部門責任者であるシュネード・カイヤ(Sinead Kaiya)氏は「インダストリー4.0は約10年前から訴えられてきた。その中でSAPは最初から中心的な役割を担って取り組んできた。そして、今この取り組みを次のレベルに引き上げることが必要だと考えている。それは、従来のインダストリー4.0で強く訴えられてきた産業用オートメーションの世界と、ビジネスプロセスを結ぶことだ。SAPではこれを『Industry 4.NOW』と呼び、積極的に推進する方針だ」と語っている。
ただ、インダストリー4.0への取り組みは、製造業にとって重要な位置付けであることは変わらないものの、PoC(概念実証)などから先に進めることが難しく、順調に普及しているとはいい難い状況が生まれている。また、企業のITで考えた場合、SAPが従来手掛けてきたERP(Enterprise Resource Planning)システムの領域と、企業のビジネスを日常的に支えるITには大きなギャップがあり、これらを連携させるためにはシステムインテグレーションの面で、大きな負荷が生まれていた。
SAP Labs JapanのHead of Digital Supply Chain Managementである鈴木章二氏は「インダストリー4.0に向けた取り組みは、部門ごとの取り組みはそれぞれ行われているが、経営効果などの大きな成果につながっていない点が世界的な課題となっている。SAPとしても、基幹システムに入ってくる情報を待っているだけでは貢献できない。ビジネス部門に深く関わり、IT活用支援の仕組みを作っていく」と語る。その具体的な取り組みが「Industry 4.NOW」だという位置付けだ。
この「Industry 4.NOW」を具現化するための施設が「Industry 4.Now HUB」となる。「Industry 4.Now HUB」は、日本の他、ドイツ、米国の計3拠点で設立された。各拠点のエキスパートが国を越えて、顧客企業のインダストリー4.0対応の具現化を支援するという。
「Industry 4.Now HUB TOKYO」では、具体的に工場システムからエンタープライズシステムまでを連携させたショーケースを用意する他、ワークショップを通じて問題意識の顕在化やアイデアの創出を支援する。日本では、三菱電機と協力して産業用ロボットがバルブヘッドユニット組み立てる際に顧客注文時選定仕様にリアルタイムで対応するシステムを構築しているという。具体的には、OPC UAに対応したSAPソリューションとEdgecrossに対応した三菱電機の産業用PC、PLC、協働ロボットを連携したとしている。
加えて、社内外の学習機会などを提供する他、インダストリー4.0の取り組みを共同推進するアライアンス「Open Industry 4.0 Alliance」などとも連携し、ショーケース拡充などを進めていくという。今後は工場内の設備メーカーだけではなく、センサーメーカーなども含めて提携先拡充を進めていくという。「技術をつなげていくだけではなく、それをどうビジネスプロセスに活用していくかという点が重要だ」(鈴木氏)。
SAPでは以前からドイツでのインダストリー4.0での知見などを生かし、日本での提案強化も進めていたが、新たな施設により実現できることとして鈴木氏は「ショーケースなどを通じて、製造現場のシステムとエンタープライズITシステムなどを具体的に連携させた姿を示しながら、どういう領域でどういうことを取り組むのかをリアルに提案できるようになることが大きな違いだ」と語っている。
またカイヤ氏は「従来は個々の地域での取り組みに限られてきたが『Industry 4.Now HUB』はグローバルに3拠点あり、東京はその1つとなる。米国やドイツの拠点の知見も組み合わせて、より最適な事例や知見などを活用できるようになった。そこが大きな違いとなる」と考えを述べている。
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