3つの事業領域における戦略的取り組みで、山本氏が成長に向けて大きく期待しているのが「新オートメーション領域開拓」である。同取り組みでは「モノと情報の融合による産業構造変革への対応」を重視しており、それを大きく進めるための新組織がITソリューション推進部とクラウド運用センターになる。
ITソリューション推進部では、同社の国内における事業モデルを海外に展開するための「社内DX化」と、顧客のDXを支える「社外DX化」を同時に推進していく。社外DX化であれば、異常予兆検知システムの「BIG EYES」などで既に採用実績があり、他にもさまざまな提案が行えるよう体制を拡充していく方針だ。
クラウド運用センターでは、特定のクラウドベンダーと連携したプラットフォーム展開を目指すのではなく、顧客の要望に合わせて適材適所でさまざまなクラウドを利用していくことになる。ただし「クラウド運用ではセキュリティを重視していく。当社でしっかり顧客をサポートできるようにしたい」(山本氏)という。
工場などの生産拠点については、マザー工場となる新湘南工場(神奈川県寒川町)が2019年4月に完成し、中国・大連とタイの海外工場と連携したグローバル生産を進める体制が整った。生産拠点への設備投資は一服した形だが、今後は技術開発拠点の藤沢テクノセンター(神奈川県藤沢市)の機能強化に向けた投資を計画している。山本氏は「新オートメーション領域開拓に向けて、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、クラウドなどの新技術潮流に対応する上で重要な役割を果たす」と強調する。
なお、アズビルは2020年度業績見通しを、COVID-19による影響を加味して売上高が前年度比5.6%減の2450億円、営業利益が同11.9%減の240億円などとしている。「海外で工場の操業を停止するなどの影響があったが、リーマンショック時よりは落ち込みは小さい。顧客の要望に応えながら、社員の安全を確保して事業を推進するのは大変だが、何とか道筋も見えてきた。リモートワークの採用なども含めて、変革を進めるのにいい機会になるのではないか」(山本氏)としている。
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