CSIの活用イメージとしては、医療機関やデータ取得受託機関から、ヒト由来データなどの取り扱いが難しいデータの受け渡しをセキュアな環境で実現したり、大学や研究所などアカデミアの共同研究先や社外のITベンダーなどと共有可能なIT環境を払い出してのアプリ開発などを挙げた。志済氏は「2021年末をめどに、社外研究者との研究プロジェクトだけでなく社内の研究プロジェクトも推進する基幹のインフラとなるようにしたい」と述べる。
また、CSIのPoC(概念実証)として実施したゲノムデータ管理システムの全自動化では、ITリソースの調達期間を6カ月から2週間に短縮するとともに、導入コストを従来と比べて90%削減するという成果が得られた。「これまでベンダーのSEが手作業でやっていたシステム構築を自動化することで期間とコストを大幅に削減できた。PoCのシステムの場合、従来だと数千万円かかっていたコストが数百万円になった」(中外製薬 デジタル戦略推進部 デジタル基盤グループマネジャーの後藤遵太氏)。
今回の取り組みは、創薬研究におけるCSIの活用にスポットが当たっているが、CSIは全社データ利活用基盤として、創薬研究にとどまらず、臨床開発、製造、営業マーケティングにも貢献するものだ。AWS ジャパン 技術統括本部長 執行役員の岡嵜禎氏は「AWSは製薬業界のデジタルトランスフォーメーションを支えるさまざまなサービスやソリューションがある。また、医療、医薬業界で厳しく求められるクラウドセキュリティや、医薬品、医療機器のコンプライアンスに対応する体制も整備しており、今後も中外製薬の取り組みに貢献できる」と説明する。
なお、CHUGAI DIGITAL VISION 2030のロードマップにもある製造のスマート化については「まずは、オペレーションの可視化やデータの見える化に向けて要件を固めているところだ。どういったツールを使うかなども検討中で、2030年に向けて数年単位での取り組みになるだろう」(志済氏)としている。
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