日立製作所は2020年6月29日、同社の研究成果である幸福度計測技術を用いたスマートフォンアプリ「Happiness Planet」などの事業化を目指す新会社「ハピネスプラネット」を設立すると発表した。当面は、アプリを通じて幸福度を測定することで、組織パフォーマンス改善を目指すアプリ事業を主軸に展開する。
日立製作所は2020年6月29日、オンラインで記者会見を開催し、同社の研究成果である幸福度計測技術を用いたスマートフォンアプリ「Happiness Planet」などの事業化を目指す新会社「ハピネスプラネット」を設立すると発表した。設立日は同年7月20日で、資本金は9億9千万円、従業員数は10人程度を予定。代表取締役兼CEOは日立製作所フェロー 未来投資本部 ハピネスプロジェクトリーダーの矢野和男氏が務める。
ハピネスプラネットは事業目標として「ハピネス&ウェルビーイング産業の創生」を掲げている。当面は、スマートフォンアプリで従業員の幸福度を定量的に測定することで、生産性向上や離職率低下など組織づくりにポジティブな効果をもたらすことを目指すアプリ事業を主軸に展開する予定。
同社が個人の幸福度に注目するのは、それが組織のパフォーマンスに一定以上の影響力を及ぼす要素となるからだ。「過去20年程度の科学的研究を通じて、幸福度が高い組織や人は生産性や創造性が高く、離職率も低い傾向にあることが判明している。幸福度の改善に向けた取り組みが、組織改善の糸口につながる可能性がある」(矢野氏)。
こうした幸福度を測定し、見える化する上で重要な役割を果たすのがスマートフォンアプリのHappiness Planetである。スマートフォンやスマートウォッチといった端末に内蔵された加速度センサーなどを用いてアプリ使用者の身体運動を計測。収集した情報を基にアプリ使用者の幸福度を数値化する。
「過去の研究から、全体的に従業員の幸福度が高い組織では、従業員にいくつかの特徴的な行動や身体動作が観察されることが分かっている。例えば『定例会議以外でもメンバー間で短時間の雑談をする機会が多い』『話し相手の身体の動きに自然と自身も同調する』などだ。これらの行動を指標にすることで目に見えない『幸せ』も可視化できると考えた」(矢野氏)
幸福度を改善するための施策はさまざまに考えられる。その中でも矢野氏が重視するのが「雑談のようなやりとりをする機会を社内で持つこと」(矢野氏)だ。無意識的な雑談は非生産的な行為に思われがちだが、実は組織内の心理的安全性を高めて、業務分担の適正化や社内での正確な意思決定を可能にする役割を持つ。Happiness Planetには幸福度の可視化機能だけでなく、他の従業員と雑談できる社内SNSの機能なども搭載されており、これらを活用することで幸福度の改善が図れるという。
また矢野氏は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、職場のコミュニケーションの在り方に変化が生じつつあることにも触れて「COVID-19によって多くの企業でリモート化が進んでいる。しかしリモートワークでは、オフィスで無意識的に行われている雑談など、共感と相互理解の機会が失われやすい。コミュニケーションは単に情報を伝達することが目的ではない。心理的安全性が低下することで、幹部が部下から会社全体の正確な情報を収集しづらくなり、間違った意思決定がなされる可能性もある。With/Afterコロナの時代の働き方を考える上で、当社も多くの貢献ができると考えている」と語った。
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