現状で同社が受注を拡大しているのは、画像や映像などに関連する回路設計やFPGA開発などの領域である。「主力のFAおよび計測領域でも機器の中で画像を活用する機能が増えている。また、医療系でも画像を取り扱うケースが多くなっており、開発負担の高まりから当社への引き合いも強くなっている。これらの領域は、今後も画像や映像の活用が増えると見ている」と清水氏は語る。
また、ここ数年はFPGAニーズ拡大を生かした自動車分野への進出に力を注いできたが「本格的な需要はこれからだ。ここ数年は、安全安心方面の開発や低速での自動走行に向けた開発への関心が高かったが、いよいよ高速での自動運転への研究開発が進みそうな兆しが出てきた」と清水氏は期待を寄せる。
その中で2014年には、クロアチアのXylon(ザイロン)と提携。日本国内における同社技術の独占使用契約を締結しており、自動車の先進運転支援システム(ADAS)の設計受託市場への提案を進める。2017年には仮想カメラの視点を自在に変更し360度リアルタイムに自車両の周辺監視が可能な「車両周辺モニタリング用フライングカメラシステム」の共同開発を実施するなど、取り組みの幅を広げている(※)。
(※)関連記事:走るクルマも自由視点で俯瞰できる、OKIが「フライングビュー」を提案
清水氏は「高速での自動走行で映像技術を活用する場合、4Kや8Kなど高精細な映像処理が求められるといわれている。こうした大容量の映像情報を電装系技術と組み合わせてリアルタイムで処理する機能や、フライングビューなどのように映像情報を組み合わせて1つの映像を作り上げる機能など、OKIアイディエスの強みが生きる領域での開発ニーズが高まっている」と述べている。
これら映像の活用が広がる中で、映像情報や画像情報を処理する機能がエッジの機器にも求められるようになり、AI機能に大きな注目が集まっている。その中で、OKIアイディエスとしても組み込みAI領域を強化していく方針だ。
清水氏は「AIのアルゴリズム開発を行うわけではなく、開発された推論モデルを検証し製品に組み込む領域を担う。アルゴリズムの開発はITベンダーなどが取り組むが、機器に組み込む場合はそれぞれ開発が必要になり、今後多くのニーズが生まれてくる。組み込みソフトウェアの領域では、ハードウェアの性能が限られるために性能をコンパクト化し省電力で組み込む必要がある。組み込みAIについても、これらをコンピュータ上で検証しポーティングし、アクセラレートすることが求められる」と述べている。
そのための開発環境の整備やトレーニングの強化なども進めているという。パートナーシップを結んでいる、FPGAベンダーであるXilinx(ザイリンクス)と連携し、開発ツールのトレーニングを進める他「2020年3月後半から約10人ずつ外部の教育機関に送りAIのトレーニングなども進めている。AIを理解しているハードウェア開発パートナーというポジションニングを目指している」と清水氏は語る。
組み込みAIの開発には、従来の組み込みソフトウェアの開発と異なり、成果物が明確化できない難しさがあるが、提案方法にも工夫をしているという。「できる限り実物に近い動くモデルを見せて提案することが重要だ。そのためには汎用的なデモよりも、実態に合わせたレファレンスを作る取り組みを重視している。分野や機能に応じたレファレンスを増やしていくことで、さらにコンパクトにスピーディーに開発を行えるようにもなる。また、これらのレファレンスを組み合わせることで複雑な機能も短期で開発が行えるようになる。以前は顧客の求めるものを作るという業務だったが、変化が大きい時代となり顧客企業も何をどう作ればよいのか分からないケースが増えている。そのため、まずはどういうことを見える形で示していく重要性が問われている」と清水氏は考えを述べている。
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