さらに、ロボットはシステムとしての導入が求められるので、協働ロボット単体だけではなくシステムとしての使い勝手向上も必要だ。その意味で新たに協働ロボット専用のパートナー会「MELFA 協働ロボットパートナー会」を19社で発足している。パートナー会を通じて、パートナー各社が開発したロボットハンドやカメラなどの周辺機器との連携や、ユーザーニーズに応える製品開発などを進めていく方針である。パートナー製品は「RT VisualBox」で簡単に接続設定が可能とする計画だ。
現状では、協働ロボットを搭載するAGV(無人搬送車)メーカーや、ロボットハンドメーカー、接続ケーブルメーカーなどが参加しているという。今後はさらに用途に応じてパートナーを拡大し、システムとしての使い勝手や導入のしやすさを高めていく方針である。
「協働ロボットメーカーはどの企業も使い勝手を訴えている。ただ、ロボットはシステムとして使うものだ。パートナーとの協力を通じて、システムとして簡単に手軽に導入できる仕組みを作り上げていく」と荒井氏は語っている。
三菱電機が協働ロボットの開発を開始したのは2017年だという。その間にプロトタイプなどを各種展示会に出展しながら、反応を見てきた。「従来型の産業用ロボットであれば、既に知見やノウハウが確立されているので開発期間の見通しがつくが、協働ロボットは各種安全規格への対応などに時間が必要だった他、『人とともに働く』『使い勝手を高める』というのが答えのないものであり、あらゆる方向で従来にない検証が必要となった。そのため、製品リリースまでに時間がかかった」と大塚氏は語っている。
既に協働ロボット市場には、ロボットメーカーに加え数多くのベンチャー企業からの製品投入が行われており、三菱電機としては後発の位置付けとなる。ただ「まだまだ市場が本格的に広がるのはこれからだと見ている。用途も以前からロボットを使っていた産業の他、電機業界や工作機械との組み合わせなどさまざまな領域で広がりつつある。また、COVID-19の影響で人が行う作業でも人と人との距離を広げる必要が出ている。この間に協働ロボットを入れるなど、新たな用途がさらに増える」と大塚氏は市場の見通しについて述べる。
また「従来の産業用ロボットはシステムとして、ラインや工程を丸ごと作る形でしか導入できずに投資の規模が大きくなる傾向があったが、協働ロボットでは単体で小さな作業を置き換えることが可能となり、導入に向けての投資規模が小さく始められる利点もある。初めてロボット導入を行うような企業から『まず1台から試してみたい』というような声も出ている」と荒井氏は語っている。
さらに、三菱電機の総合力も強みだという。「人作業の置き換えや他の機器やラインとの組み合わせで使う場合、他のFA機器との連携などが必要になる。そうした場合にコントローラーを共通化できるなど、従来のロボットシリーズと同様、オートメーションの一環としての導入ができるのは三菱電機ならではの強みとなる。協働ロボット単体として小さな規模での導入から開始し、その後で他のシステムやラインと組み合わせて規模を拡大していく場合にも円滑に移行できる」と荒井氏は強みについて述べている。
発売後は既に数多くの問い合わせが入っているという。「世界中から反応がある。協働ロボットの活用に積極的な欧州や米国などの他、アジアからもサンプルを見たいという声を数多くもらっている。日本でもキャンペーンを実施しており、反応は非常に良い」と荒井氏は語る。今後はまず年間1000台ペースでの販売を目指すという。
また今後の製品開発の方向性については、まずは「MELFA ASSISTA」の販売動向を見ながら決めていくとしている。「今回は人作業の置き換えを想定し可搬質量5kgの製品を投入したが、さらに可搬質量の大きいものがよいのか、もしくは小さいものが求められるのかなどは市場の動向を見定めていく。また、立ち上げしやすくするために部品点数の削減などに取り組んでいく他、システムとしての導入しやすさや操作しやすさを高めていく。AGVとの連携や、ロボットにビジョンセンサーを設置する際にAIを活用して簡単に設定できるような仕組みなど、さらに使い勝手を高める方向性で開発を強化していきたい」と大塚氏は今後の方向性について語っている。
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