物質・材料研究機構と産業技術総合研究所は、植物ホルモンのエチレンを常時モニタリングできる小型センサーを開発した。エチレンの活用により、熟成や保存の管理など食物に関わるシステムを最適化できるため、フードロスの削減につながる。
物質・材料研究機構(NIMS)と産業技術総合研究所(産総研)は2020年5月12日、植物ホルモンのエチレンを常時モニタリングできる小型センサーを開発したと発表した。
野菜や果物から放出されるエチレンは、野菜や果物の熟成を促進させる働きを持つ。エチレンを常時モニタリングし、そのデータを活用することにより、人為的に熟成を促したり、熟成の進み具合を予測したりできるため、輸送や保存、管理など食物に関わるシステムを最適化できる。ひいてはフードロスの削減につながる。
NIMSと産総研は、同センサーの開発にあたり、「選択的にエチレンをアセトアルデヒドに変換する高活性触媒」「アセトアルデヒドと反応して酸性ガスを発生する試薬」「酸性ガスを高感度に検出する単層カーボンナノチューブ(SWCNT)で修飾した電極」の3つを組み合わせた。
高活性触媒は、エチレンを含む空気を通すだけでエチレンをアセトアルデヒドに変換でき、繰り返し使える。さらに、室温に近い40℃で駆動するため、高温に保つ必要がなく低消費電力で動作できる。
また、試薬とアセトアルデヒドが反応して発生した酸性ガスは、SWCNTに対して強い電子引き抜き剤となり、SWCNTの電気抵抗値を変える。
同センサーは、電気抵抗の変化をモニタリングすることで、0.1ppmのエチレンを選択的かつ高感度に検出可能だ。果物の熟成に用いるエチレン濃度は、例えばバナナでは約500ppm、キウイフルーツでは約10ppmとされており、開発したセンサーは実用に十分な検出性能を備える。
また、小型で省電力であるため低コストで設置でき、農業や食品分野におけるSociety 5.0の推進に貢献する。今後、NIMSおよび産総研は、今回とは異なる高活性触媒を用いて、エチレン以外のガス分子に対応する小型センサーの開発も進めていく。
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