ニューノーマルを実現する技術として紹介されたのが、Telexistenceとマイクロソフトの協業で実現に向けて取り組みを進めている小売り向けクラウドロボティクスサービスである。
Telexistenceは2017年創業のスタートアップ企業である。社名の由来となった「TELEXISTENCE」は、同社の会長でもある東京大学名誉教授の舘すすむ(日へんに章)氏が1980年に提唱した「人間が、現存する場所とは異なった場所に実質的に存在し、その場所で自在に行動する」という人間の存在拡張の概念やそれを可能とするための技術体系を意味する。
同社はこの概念を実現することを目指し、遠隔操作・人工知能ロボットの開発とそれらの技術を活用した事業を展開するロボティクス企業である。具体的には、ロボットのハードウェア開発、遠隔操作および制御技術の開発、ロボットハンドの把持技術開発などを行う。さらに、ロボットの環境認識や制御の切り替えのために機械学習による汎用行動計画なども開発を進めているという。
同社が目指しているのが、このロボットの遠隔操作を通じて人の感覚や知見を拡張することにより、物理的な労働がどこからでも可能な「拡張労働基盤(Augmented Workforce Platform、AWP)」の構築である。このAWPの実現に向けて、マイクロソフトと提携し。クラウド基盤「Microsoft Azure」上にAWPを構築する取り組みを進めている(※)。
(※)関連記事:Telexistenceが日本マイクロソフトと協業、小売業界向けに展開
Telexistence 代表取締役 兼 CEOの富岡仁氏は「デジタル技術の進展により、オンライン上での業務は利便性が高まり強化されているが、オフライン環境の支援や強化は今までほとんどなかった。人とロボットがつながって労働に参画することでオフラインをデジタルの力で高めることを実現したい」と語っている。
Telexistenceとマイクロソフトが協業により、最初にこれらの技術導入を目指しているのが小売業の現場である。小売業の現場では労働人口減少に伴う人手不足とそれに伴う賃金上昇が深刻化している。また、多くの領域で自動化が進んでおらず、ほとんどが人手による作業となっている。
こうした中で両社がまず実現しようとしているのが、小売店舗での「品出しと陳列作業」と「FF調理」などの作業をロボットの遠隔操作で実現することだ。「コンビニエンスストアであれば全体作業時間の2割弱を占めるこれらの作業の遠隔操作に取り組んでいる。こうしたことが実現できれば、従来は店舗の半径1〜2kmのみから人材採用をせざるをえなかったが、日本中のどこからでも人の採用ができるようになるかもしれない」と富岡氏はその価値について述べる。現状は、小売店舗内で遠隔操作ロボットが203形状、2200品目の商品を陳列する実証などを進めているという。
こうした世界の実現はまだ先のように感じるかもしれないが「2020年7月以降に小売店舗でロボットを常設で導入する計画がある」(富岡氏)という。三上氏は「“ニューノーマル”の実現に向けて、オンラインだけでなくオフラインもデジタルの力で強化、拡張するようにパートナーと一緒に世界を作っていきたい」と語っている。
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