純度99.9996%の超高純度鉄が哺乳類細胞を接着、増殖させることを解明医療機器ニュース

東北大学は、99.9996%純度の超高純度鉄が、表面処理を施すことなく、哺乳類細胞を接着、増殖させる基質となることを明らかにした。超高純度鉄上で細胞分化も誘導可能だ。

» 2020年05月25日 15時00分 公開
[MONOist]

 東北大学は2020年5月13日、99.9996%純度の超高純度鉄(ABIKO-iron)が、表面処理を施すことなく、哺乳類細胞を接着、増殖させる基質となることを明らかにしたと発表した。ABIKO-iron上で細胞分化も誘導でき、その際にさまざまなストレス応答遺伝子の発現も見られなかった。本成果は、同大学大学院生命科学研究科 教授の東谷篤志氏らの研究グループによるものだ。

 研究グループは、ABIKO-iron上における各種哺乳類培養細胞の細胞接着性、増殖活性、細胞分化能から、ABIKO-ironの生体適合性を調べた。その結果、ABIKO-ironは細胞接着性、増殖活性に優れており、分化誘導培地では筋芽細胞から筋管細胞、間葉系幹細胞から骨芽細胞へ分化誘導できることを確認した。

キャプション マウス横紋筋由来C2C12筋芽細胞のABIKO-iron上での増殖(左)とその分化誘導5日後の筋管細胞への分化状況(右)を捉えた走査電子顕微鏡像 出典:東北大学
キャプション 間葉系幹細胞MSCsのABIKO-iron上での分化誘導前(左)とその分化誘導21日後の骨芽細胞への分化状況(右)を捉えたアリザリンレッド染色像 出典:東北大学

 また、遺伝子発現解析において、生体毒性や重金属ストレス応答など、ネガティブな遺伝子の働きが誘導されないことを明らかにした。

 各種合金などの金属材料は、人工歯根や骨を固定するボトルなどさまざまな医療用資材として使われている。しかし、生物毒性や金属アレルギーの発症、移植後の周辺細胞との接着性や適合性が弱いといった課題があった。一方、鉄は生体内に存在する必須金属元素の1つだが、過剰な鉄イオンは細胞毒性を有するため、腐食性の高い汎用純鉄などを生体材料に使用することはできなかった。

 ABIKO-ironは、同大学金属材料研究所 元客員教授の安彦兼次氏が精錬した純度99.9996%±0.0003%の高純度鉄。これまでに可塑性や耐食性など新奇の特性が証明されている。今回の研究結果により、超高純度鉄の新奇生体材料としての使用が期待できる。

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