不要不急の移動が制限されたことにより、移動は強制的に効率化される。また、生活に密着した移動サービスの必要性に対し、技術よりも課題に即した移動サービスが増えてきている。「自動運転を始め、10年20年先を見据えた最先端の技術よりも、今の課題を解決するためのサービスが、今後乱立することが予想される」(北川氏)。さらに、自粛明けの経済再開を目指して、新しい消費や出会いを生む移動の必要性が求められる。
「beforeコロナ」の時代には、モビリティ業界を含めて社会全体で、コスト/投資面からみると企業の内部留保が過去最高水準にとなり、積極的未来に投資するということが考えられていた。これが、「after/withコロナ」の時代においては、生き残ることに不要なコストをカットする方向になる。これまで製品は新しいものを積極的に試すという動きが強かったが、それがNice to Haveでは売れなくなり、Must Haveという形が求められる。これに対応して、各社が取り組みを変化させていきそうだ。
働き方も変わる。オフィスへ出勤し、営業は客先へ訪問という形から、テレワーク中心でミーティングや押印などの企業プロセスの多くがオンラインへと移行していく。企業の価値観では、これまでは売上成長率や革新的な新規事業、個々の人々のパフォーマンス向上などを重視してきたが、持続可能性の追求や、足元の具体的な課題の解決、社員のメンタルケアや働きやすさなどが優先されるように変わることが見込まれる。
世の中に大きな影響を与えるCOVID-19だが、北川氏はこの変化をポジティブに捉える必要があると指摘した。「働き方や価値観などあらゆるものが強制的にアップデートされており、これを機に次世代につなげていきたい。そこには多くの痛みを伴うが、より持続的で本質的な価値観をより早く追求することは、新たな価値が生まれる瞬間でもあり、それらに対応することでチャンスをつかめる」(北川氏)。
そして、今回の出来事が「既存事業はより筋肉質に、顧客中心の製品を作るチャンス」「新たに移動のニーズ生まれているところもあり、技術よりもスピードやアイデア次第のチャンス」「各社が似たような投資をする余裕がなくなり、コラボレーションや融合から協業に持っていくチャンス」「誰にでも起きる変化なので、早く対応することで相対的に周りに差をつけるチャンス」などと捉えることが重要だとした。
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