クルマのメータークラスタは、運転手の意思決定に関わる重要な情報、例えば速度、回転数、燃料計や水温計などを表示します。しかし近年は、ヘッドユニットのデジタル化と同様に、メータークラスタも大型の液晶ディスプレイを搭載することで柔軟に表示内容を変更できるようなシステムへとアップグレードされつつあります。このようなデジタルクラスタは、個人個人に合わせて、カーナビや情報媒体、連絡手段などを表示します。
このためにはマイクロプロセッサの働きが非常に重要ですが、処理要求が増えると必然的にマイクロプロセッサの発熱も増加します。おまけに、メータークラスタを設置するステアリングの後ろ側はスペースが限られており、換気もないため、熱問題の原因になります。
適切な温度測定値を得るために、超小型の温度センサーをマイクロプロセッサの近くに配置することが有効で、これにより測定精度が上がります。測定値が高精度で得られると、熱設計限界近くまでシステムの性能を上げることができたり、低スペックのマイクロプロセッサを採用してシステムのコストを抑えたりすることが可能になります。
実際には、ほとんどのプロセッサには組み込みの温度センサーがありますが、ウェハーごとやロットの違いによるばらつきのため、精度は±4℃にしかなりません。測定値にこのような変動があると、測定値の精度が±1℃の場合よりも安全マージンをかなり取る必要があります。このケースでは、熱設計限界に近づきすぎないように、マイクロプロセッサの性能に3℃も余計な余裕を取ることになります(図3参照)。
アナログ温度センサーの「TMP235-Q1」は、-40〜+150℃の動作温度範囲で±0.5℃の精度を誇ります(グレード0)。このデバイスは、フットプリントが非常に小さく(2.00mm×1.25mm、図4参照)、低消費電力です。
最新のUSBチャージャは、USB Type Aだけでなく、60〜100Wの電力供給能力を持つこともあるUSB Type-Cもサポートします。ポートが複数ある場合はその分だけ多くの電力を処理するため、異常なほど発熱し、非常に危険な事態になることもあります。
USBコントローラICには一般にプログラマブルケーブルドループ補償があるので、高負荷時に最適な電流と電圧で携帯機器を充電することができます。さらに、インテリジェントな熱管理用にサーミスタを実装することで、USBコントローラに温度状態を知らせ、温度を下げるために出力電流限度を低いレベルに変更させることができます。例えばリニアサーミスタの「TMP61-Q1」は、正の熱係数を持ち、1mm×0.5mmの超小型パッケージでリニア出力を供給します。
温度スイッチも有効です。抵抗、電圧または出荷時設定でセットされた一定の閾値を超えた温度になるとUSBコントローラICにアラートを送ることで、過熱からシステムを保護します。より直接的に迅速な決定が下されるように、このアラートはマイコンをバイパスできます。温度閾値によっては温度センサーよりも低い温度でマイコンが故障する可能性もあるため、乗員の安全を優先し、熱暴走を防ぐ目的で重要性の低いこの機能をシャットダウンできる保護システムが必要です。さらに、温度スイッチの使用は、ディスクリート実装(図4)に比べると、閾値を検出するコンパレータや電圧リファレンスのような余分な回路が不要になる分、コスト的に有利です。
抵抗でプログラム可能な温度スイッチ「TMP390-Q1」は、-40〜+125℃の動作温度範囲をカバーし、最高精度が±3.0℃です。チャネルを2つ備え、過度の高温と低温をそれぞれ同時に検出します(図6参照)。TMP390-Q1は、電源電圧が1.62〜5.5V、25℃時の消費電流が0.5µAであることから、サーミスタに代わる低消費電力の代替品にもなります。この温度スイッチにより、熱保護機能の実装が非常にシンプルになると同時に、チップ1つで高温と低温両方の保護を備えているため、集積度が最も高くなります。
インフォテインメントシステムの温度モニタリングや熱保護に対応する方法はいくつもあり、考慮すべき要素は他にもたくさんあります。クルマの機能や搭載されるディスプレイの数が増え、それによる処理要求が増大する中、事故防止のためには熱に関する安全性を保障することが重要です。
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