OKIエンジニアリングは、電子部品の信頼性試験サービス強化の一環として、中空パッケージ部品の気密性試験サービスを開始することを明らかにした。これによりMIL規格(米国軍規格)指定の11の試験メニューをワンストップで対応可能とし、従来は4週間かかっていた試験期間を2週間程度に半減し、製品開発時間削減が可能になるという。
OKIエンジニアリングは、電子部品の信頼性試験サービス強化の一環として、中空パッケージ部品の気密性試験サービスを2020年5月12日に開始することを明らかにした。年間1億円の販売目標を目指す。
電子部品の信頼性評価は基本的に、部品メーカーで開発時、量産化検討時、出荷時の3回、セットメーカーで部品選定時、試作時、出荷時の3回行うのが一般的だ。しかし、最近では、電子部品メーカーが開発した部品の生産期間を短くする傾向にあり、セットメーカーにとっては同じ製品を生産し続けるのに、部品調達に苦労するケースが増えてきている。さらに、最近では半導体製品や電子部品を新興国などから調達するケースも増えてきているがロットによる品質のばらつきが大きくなっており、定期的な品質評価が欠かせない。また、パンデミックや紛争、地政学的問題などが頻発する昨今の世界情勢により、従来のルートで調達が困難になるケースなども増えており、これらを柔軟に変更しながら品質を確保するために、品質評価を行う頻度も増えてきている。
一方で、品質評価試験には、最新の評価設備が必要である他、評価担当者が一定時間張り付く必要があり、人手やコストの面でも大きな負担がかかる。そこで、品質評価を外部に委託するケースが増えつつある。
こうした中で品質評価サービスの体制強化を進めているのがOKIエンジニアリングである。2019年11月には自動車向けの信頼性評価機能を強化するために、群馬県に「群馬カーエレクトロニクス テストラボ」を設置(※)。また、2020年3月には電気製品の安全性に関する規格の各国申請手続きを簡便化できるCB(Certification Body)証明書のワンストップ申請サービスなどを開始するなど、強化を進めている。
(※)関連記事:CASEで搭載増える車載電子部品、ボトルネックとなる信頼性評価の受託強化
この流れの中、中空パッケージ型電子部品の気密性試験サービスを新たに開始する。車載、宇宙、産業用で電子化が進む中で、中空パッケージ部品の採用が急増している。例えば、宇宙向けでは、CPU(集積回路)やトランジスター、ダイオードなどの採用が増えている他、車載向けでは加速度センサーなどのセンサーデバイス、CCDなど、産業用では水晶振動子やランプなどの採用が増えている。これらのパッケージの気密性が確保できているかを評価するのが気密性試験サービスである。
OKIエンジニアリング 信頼性解析事業部 事業部長の高森圭氏は「気密性試験は部品がしっかりと組み立てられているかを確かめる意味でも重視されている。本来の品質評価にかかわるさまざまな試験を行う前に、大前提として行われる場合も増えておりニーズは高まっている」と述べている。
気密性試験には、中空パッケージ内に封入する気体として用いられているヘリウムガスを検出し漏れ量を測定する「ファインリーク試験」と、液体中に部品を沈め気泡の有無を確認する「グロスリーク試験」の2種類があるが、今回OKIエンジニアリングではこれらの試験設備を導入し、両方に対応できるようにした。
これにより、MIL規格で指定されている電子部品の信頼試験項目11項目を内製で行える体制を構築した。具体的には、従来は4週間かかっていた試験サービス期間を、半分の2週間に短縮できるという。「宇宙分野や車載分野など、新たに採用する電子部品が多い領域では信頼性評価の基準として、厳格なMIL規格をベンチマークとするところも増えてきている。これらの基準を満たすサービスを内製で行い、短い期間で評価を行えるようにすることで、顧客企業の製品開発期間の短縮にも貢献できる」と高森氏は述べている。
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