CASEで搭載増える車載電子部品、ボトルネックとなる信頼性評価の受託強化車載電子部品(1/2 ページ)

OKIエンジニアリングは2019年11月に群馬県伊勢崎市に「群馬カーエレクトロニクス テストラボ」を開設。CASEなどにより車載電子部品が大幅に増える中で、ボトルネックとなる信頼性評価の受託を強化していく方針である。

» 2020年01月30日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 自動車業界の変化として、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)がトレンドとして注目されているが、この流れの中でクルマへの搭載が急速に増えているのが、車載用電子部品である。しかし、大幅に増える車載用電子部品に対し必要になる信頼性試験や評価のリソースが不足している。特に高密度化やモジュール化、無線化などが進み、従来以上に高度な試験が求められる中で、各社が個別で試験を行うには難しい状況が生まれている。

 こうした状況を見据え、新たに車載電子部品用の評価施設を増設したのが拡充したのが、OKIグループで信頼性評価と環境保全の技術サービスを展開するOKIエンジニアリング(OEG)である。同社は2019年11月に日本で2カ所目となる車載機器専用のテスト施設「群馬カーエレクトロニクス テストラボ」を開設した。EV(電気自動車)化により需要が急伸する車載電子機器の長期信頼性試験の受託サービス体制を強化し、対応能力を大幅に増強する。OKIエンジニアリング 代表取締役社長の橋本雅明氏と同社システム評価事業部事業部長の中嶋龍一氏に話を聞いた。

photo 「群馬カーエレクトロニクス テストラボ」の様子(クリックで拡大)

電動化で急増する車載用電子部品の信頼性評価

 OEGでは電子部品のさまざまな総合評価サービスを行っているが、ここ数年車載向け電子部品の評価ニーズが急増。これに対応するため、2017年に「カーエレクトロニクス テストラボ」を埼玉県本庄市の本庄ラボ内に設立し、車載機器に特化した信頼性試験サービスとして、「ワンストップ車載コネクター信頼性評価」や「スプラッシュウオーター衝撃試験」「硫黄(S8)ガス腐食試験」などを提供してきた。しかし、EV化によりECU(電子制御ユニット)など電子機器の長期信頼性評価の需要が増加し、既存の試験設備はフル稼働で新たに対応できない状態になっていたという。

photo OKIエンジニアリング 代表取締役社長の橋本雅明氏

 橋本氏は「信頼性試験の中では車載電子部品の依頼が大幅に増えている。問い合わせ数はここ1年で3倍近くに増えている。電動化やエンジンの48V化など、基本的な構成が変化すると、搭載される電子部品も変更しなくてはいけなくなる。高電圧対応や熱対応などが必要になるためだ。こうして置き換わる部品はそれぞれ全て評価試験を行わなければならないが、自動車の試験は長い期間が必要になる。そのため、信頼性評価施設が逼迫している状況が生まれている」と信頼性評価へのニーズの高まりについて語っている。

 そこで、車載電子機器や装置の試験サービスを増強するため2019年11月に「群馬カーエレクトロニクス テストラボ」を新設した。新設の「群馬カーエレクトロニクス テストラボ」は床面積が約379.5m2。ITの活用により遠隔からの試験対象品の状態監視の他、試験設備の稼働状況や測定データの取得、分析などを可能としている。長期信頼性テストをはじめ単純だが長い期間が必要なテストを主に請負い、少人数で24時間365日運用する「スマートテストラボ」として稼働させるという。

photo ラボ内の様子はカメラで遠隔監視。現状は映像で積層信号灯の情報などを確認し機械の稼働状況などを把握する。将来的には試験データなども遠隔で把握できるようにする計画である(クリックで拡大)

 「一般電子部品が10年相当で寿命を設定し、それに合わせて1000時間程度の長期信頼性加速試験を行う。一方自動車業界では走行距離が基準になり、30万kmで設定されることが多い。仮に、10万kmを10年相当として考えた場合、車載向けでは3000時間程度の試験期間が必要になり、通常の3倍程度の時間が必要になる。その他、耐環境性能などの試験も必要で半年くらいの試験期間が必要になる。こうした手はかからないが長期間必要な試験を群馬の新施設に担わせる」と橋本氏は語る。

 まずはエンジンの寿命を想定した約3000時間の長期信頼性加速試験(温湿度試験、熱衝撃試験)を稼働。徐々に設備導入を増やし、減圧試験、耐候性試験、ガス腐食試験、塩水噴霧試験などの長期信頼性試験をサービスメニューに追加していく予定だという。「2020年度中に全ての空きスペースに設備を導入する計画。2021年度には、新たな増設を検討する」と橋本氏は計画を述べる。また「群馬カーエレクトロニクス テストラボ」は沖電線群馬工場内にあるが、沖電線と協力した評価試験なども行う計画。車載ハーネスの評価などを進めていくとしている。

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