デジタル化がどのように製造業の企業活動の変革を導くのかを解説する本連載。第1回は、企業収益の次の柱となり得る、革新的な製品やビジネスをどのように創出するかについて考察する。
はじめまして。アクセンチュアで製造業のデジタル革新、中でも主にエンジニアリング領域を担当している志田穣と申します。
IT/OT(制御技術)システム連携、IoT(モノのインターネット)、アナリティクス技術を活用して、企業のコア業務の効率化に大いに役立つデジタル化は、製造業にとっても喫緊の課題になっています。アクセンチュアでは、これらに加えて、従業員や顧客に新しいエクスペリエンス(体験)を提供すべくビジネスモデルをも変革する「インダストリーX.0」をデジタル化の指針として提唱しています。
今回の連載(全3回)を通して、このデジタル化がどのように製造業の企業活動の変革を導くのかについてご説明したいと思います。第1回では、企業収益の次の柱となり得る、革新的な製品やビジネスをどのように創出するかについて考察していきます。
一口にデジタル化といってもさまざまな段階があります。
いずれにしても、この10年間であらゆる領域において爆発的にデジタル化が進んでいるといえます(図1)。
これは、複数のデジタル関連技術の急速な成長にも起因しています。下の図2は、デジタル関連技術の進展を表しており、横軸は時代、縦軸は利用量を示しています。旧来技術(メインフレーム、C/S)が頭打ちとなる中、クラウド、モバイル、IoT、AI(人工知能)が驚異的な成長を遂げていることが分かります。それに伴い、自動運転車やスマート工場など、新たなデジタル技術を駆使した製品・サービスが勃興しています。最近では、量子コンピュータに関する研究が進んで実用化も始まっており、従来型コンピュータでは限界のあった配送経路最適化、金融工学などの分野への適用が期待されています。
企業活動のデジタル化には主に2つの軸が存在します。
既存の製品やサービスに対するオペレーション、つまり、設計開発、生産準備、生産、物流といった業務をデジタル化で改善し、生産性向上やコスト削減を図るというものです。業務領域ごとに断絶しがちな業務の流れを連携/自動化することや、センシングにより稼働情報を集積し、分析して、設備稼働率向上を図る取り組みなどがこれに相当します。
データ主導型の全く新しい製品/サービスを導入することにより、収益拡大を図るものです。販売するだけの売り切り型から、使用状況に基づく課金制へ転換する、また、スマート製品による顧客個別嗜好への自動適応、コネクテッド製品による恒常的な製品機能の向上などがこれに相当します。
デジタル化の流れの中で、多くの伝統的企業は、上の2つの軸のどちらかに沿った改革を進めていますが、本質的に価値を創出する新しいビジネスモデルを狙うには、双方を考慮した検討を行いマーケットの創造的破壊を起こしていくことが必要です(図3)。
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