物流の第4次産業革命ともいえる「Logistics 4.0」の動向解説に加え、製造業などで生み出される新たな事業機会について紹介する本連載。今回は特別編として、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックにも対応可能な、サプライチェーンの維持・継続を図るためのリスクマネジメントの在り方を取り上げる。
本連載は、“サプライチェーンの新潮流「Logistics 4.0」と新たな事業機会”と題して、先進企業の動向と、新たなプラットフォームビジネスの可能性を紹介してきました。ですが、今現在、喫緊の課題となっているのは、社会全体に大きな影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応でしょう。
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特別編の前編では、COVID-19のようなパンデミックを含めた危機的事象が発生した場合のリスクマネジメントの在り方について解説しました。後編となる本稿では、危機的事象に際してサプライチェーンを維持・継続するための在り方、本連載で取り上げてきた「サプライウェブ」のリスクマネジメントについて説明します。
さて、前編で解説したのは、パンデミックをはじめとするさまざまな危機的事象が発生したときのリスクマネジメントの在り方でした。危機的事象に際してサプライチェーンの維持・継続を図るためのアプローチも基本的には同じです。ただし、そのマネジメントすべき範囲は格段に広くなります。
第1に、自社のみならず、調達先や納品先も事業活動を継続できていなければ、サプライチェーンは途絶します。直接の取引先だけではなく、「調達先の調達先」や「納品先の納品先」も事業活動を継続できている必要があります。BCP(事業継続計画)の策定に当たっては、主要な取引先とともに連携の在り方を検討しておくべきです。加えて、「調達先の調達先」や「納品先の納品先」まで管理しきれないことを考えると、代替の調達先・納品先を確保しておくことも枢要でしょう。
サプライチェーンがモノを供給するプロセスである以上、モノを運ぶ物流会社との連携も大切です。主な委託先の物流会社とは、危機的事象が発生したときの対応を協議し、それぞれのBCPに反映させるだけではなく、共同での訓練を定期的に実施するなど、有事の際に迅速かつ的確に協力し合えるような態勢を整えておくことが望まれます。
物流会社との連携がきちんとしていたとしても、道路、線路、港湾、空港といった物流インフラが使用できなければ、モノは運べません。従って、各物流インフラが使用可能な状況にあるのかをクイックに把握できるようにしておくことも大切です。併せて、「東北自動車道が使えないときには鉄道で運ぶ」「東京港が閉鎖されたときには横浜港を使う」「気象災害により飛行機の遅延・欠航が予想されるときには出荷のタイミングを早める」など、委託先の物流会社とともに対応策を準備しておくべきです。
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