PTCジャパンは、「離陸するファクトリーAR 〜業務利用の現在地と今後の課題〜」をテーマとし、工場でのAR(Augmented Reality:拡張現実)活用が本格化し、実際に製造現場で使われ始めている現状を訴えた。
PTCジャパン 製品技術事業部 プラットフォーム技術本部 本部長 執行役員 山田篤伸氏は「AR技術はエンターテインメントやマーケティングセールス領域での使用が中心だったが、実際に業務で使用するという声が増えてきた。従来は製造現場などでは当てにならない技術だと見られてきたが、既に現場で実際に使われているレベルに達してきた。近い将来は産業界の新たな基盤になり得る可能性を秘めている」と可能性について語る。
ただ、ARの普及が進んでいるといっても導入に至らないケースもある。そこで今後の課題として挙げるのが4つのポイントである。1つ目は「IoTデータとの連携」である。工場IoTデータをARで活用できれば価値があるのは分かるが具体的にどのように届けるのかという苦労があるという。2つ目が「クラウドへの準備」だ。「工場データをクラウドに上げたくないという日本企業は多いがARはARマーカーを決める必要があり、現在は画像解析でゼロ点を決める場合も多いが、こうしたことはオンプレミス環境では難しい。クラウドに対応できなければARも効果的に使うことが難しい」(山田氏)。3つ目が、「現場とユースケースを探す」という点だ。IoTやARの専属部署を作ったとしても成功しないのは現場の声が届いていないという点が大きい。「成功するケースは多くが現場と一緒に取り組んでいる。現場のプロセスを変えずにARをわたしても業務プロセスは改善しない。一緒にARを使って改善するという取り組みが重要だ」と山田氏は語る。4つ目は「デバイスの進化に備える」という点だ。「ARデバイスはいまだに進化の過程で、現状では標準デバイスを定めるのは得策ではない」と山田氏は語っている。
アルテリックス・ジャパンは「製造業におけるデータの積極的活用を可能にする分析プラットフォーム」をテーマとし、セルフサービスで分析を可能にする同社のソリューションを紹介した。
アルテリックス・ジャパン セールスエンジニア 酒井信吾氏は「IoTなどにより扱うデータが大きく増える中でデータを分析する負荷なども高まっている。分析担当者は分析業務における40%がデータ検索に使われている他、平均で5つの異なるデータモデルを扱わざるを得ない状況が生まれている」とデータ分析の負荷について語る。
アルテリックスではこれらの複雑化するデータ分析の現状に対し、現場の人間が自分で行えるセルフサービス型のプラットフォームを提供。一連の動作を1人で完結できるようにする価値を訴えた。
アマゾン ウェブサービス(AWS)ジャパンは「AWSが語るエッジコンピューティングと工場データ活用」をテーマとし、同社が推進するクラウドとともに強化を進めているエッジコンピューティングの価値などを訴求。これらを活用した製造業向けのさまざまな事例について紹介した。
AWSのクラウドサービスは既に多くの製造業が活用している。2019年3月にはVolkswagen(VW)が「インダストリアルクラウド」をAWSと構築し、1500社3万カ所の工場のネットワークを統合する方針などを示している。
こうした状況の中で、エッジコンピューティングの強化、製造業の生産データ活用に取り組む理由として、AWSジャパン パートナー アライアンス統括本部 テクノロジーパートナー本部 ストラテジックアライアンスマネジャー 製造担当の柳澤政夫氏は「製造業顧客の実現したいことを聞くと、生産状況を可視化し、稼働率向上や品質向上にデータを活用することで、生産現場の省人化や高品質化などを実現したいとするものが多い。しかし、実際に取り組み始めると、データ収集の部分が非常に難しいことが分かる。そこで、このデータを収集して可視化するところまでAWSで取り組む。難しいが地道にやることが大事だと考えている」と語る。
これらの取り組みの一環として「AWS IoT Greengrass」や「Amazon SageMaker」などエッジコンピューティングで動くさまざまなアプリケーションを用意。これを活用することで、データの可視化、データ分析、エッジ側での推論処理などを実現。クラウドとエッジの両面から製造現場のデータ活用を支えていく方針だ。
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