オムロンが工場実践を通じて語る、IoTや5Gの「現実的価値」MONOist IoT Forum 東京2019(後編)(2/4 ページ)

» 2020年01月28日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

オムロンが工場で取り組む「ローカル5G」の実証

 さらに、今後の取り組みとして工場で「5G」の実証を進めると説明した。オムロンでは2019年9月に、NTTドコモ、ノキアグループと共同で5Gを活用した共同実証実験を実施することを発表(※)しており、工場内でもさまざまな実証を行う予定である。

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 「5Gを活用することで製造現場がどう変わるのかをさまざまな方向でイメージしながら、実証を進めたい。現状では生産ラインのさまざまな情報は有線で送られるケースがほとんどで、ようやく一部で無線が使われるようになったところだといえる。ただ今後、変種変量生産が中心となり、よりフレキシブルな

生産ラインが必要になる中で、変化し続ける生産ラインを実現しようと考えると有線ではできない領域が出てくる。こうした『今はできないこと』が5Gで解決できないかを模索していく」と小澤氏は語っている。

 この他、5Gによって「人と機械が混在する生産ライン」でリアルタイムに近い形でセンシングデータに対するフィードバックが行えるような仕組みや、コーチングが行えるような仕組みなども検討を進めていくとしている。小澤氏は「将来は5Gを使い、工場ごとの壁を超えて情報をクラウドに収集しそれを現場の改善にリアルタイムでつなげられるような仕組みなども考えている。これにより拠点のノウハウが拠点間で共有し、現場革新を加速できる」と5Gへの期待を語っている。

さまざまな規格の「つなぎ手」として期待されるOPC UA

 ランチセッションでは、ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の推奨通信規格として大きな注目を集めている「OPC UA」の動向について、日本OPC協議会 マーケティング部会 部会長である岡実氏が講演した。

 「OPC UA」は、産業用アプリケーションの相互運用を実現するオープンなインタフェース仕様となる。「産業用」を掲げており、高い可用性など一般向けとは異なる機能や性能を保有し、相互運用性に優れているという点が特徴である(※)

(※)関連記事:「OPC UA」とは何か

photo 日本OPC協議会 マーケティング部会 部会長の岡実氏

 もともと2008年に策定された規格だが、「OPC UA」が注目を集めるきっかけとなったのが、2015年にドイツが推進するモノづくりプロジェクト「インダストリー4.0」で、推奨通信規格として紹介されたことだ。「それ以降、全世界で大きく検索数も伸び、欧州だけではなく米国や中国、アジアでも関心が高まってきている。国内でのイベントの参加者なども大幅に増えてきている」と岡氏は語る(※)

(※)関連記事:主要規格と続々連携、ハノーバーメッセを席巻したOPC UAのカギは“間をつなぐ”

 加えて「OPC UA」そのものを、さまざまな規格の「つなぎ手」として活用する動きが高まっている点なども要因として挙げる。「OPC UA」の規格策定や普及活動は、OPC Foundationが行っているが、このOPC FoundationとVDMA(ドイツ機械工業連盟)は2019年4月にドイツで「1st World Interoperability Conference」を開催した。これは、35の業界団体がOPC UAとのコラボレーションだけをテーマにしたイベントで講演には350人を超える参加者が集まったという。

 岡氏は「業界団体が持つそれぞれの規格をOPC UAで結ぶことを目指し、団体間の連携を強化している。現在約50の団体と連携し、本当に使える相互運用性を実現するための取り組みを強化している」と述べる。業界団体との連携だけでなく、製造業などのユーザー側企業がOPC Foundationへの参加するケースも増えており、さまざまな企業や業界で活用する動きが広がっているといえる。

OPC UAが支持を受ける理由

 それではなぜここまでOPC UAが幅広く支持されているのだろうか。OPC UAは情報を「つなげる」「伝える」「安全に」「活用する」の4つのコンセプトで構成されている。従来の産業用の通信は基本的には機械とソフトを個別でつなぐ必要があり、システム変更や構成の変更などが大きな負担となっていた。そこで、中間にOPCサーバ機能を持つWindowsPCを置いて、これらの複雑性を解消しようという動きが生まれた。このために開発された規格が、現在は「OPCクラシック」とも呼ばれる第1世代の技術である。これに対し、さらにOSやハードウェアに依存せず自由に情報のやりとりを規定できる規格が策定された。これが第2世代の技術となるOPC UAである。OPC UAの登場によりハードウェアやOSなどに依存せず、産業領域で自由に通信を行い、産業機械や設備を扱えるようになる枠組みが生まれた。

 その背景として、OPC UAは、コンテクストや情報モデルを規定できるという点が挙げられる。「相互運用性を実現するためには3つの鍵が必要になる。1つ目は伝えるための枠組みを決めることだ。これは情報モデルを定義するということである。2つ目は伝える中身を作るということだ。これがコラボレーションやパートナーシップなどの取り組みとなる。3つ目が、実際につながるかの確認を行うことだ。これに対しては実際にテストツールを公開したり、相互運用試験を行ったりしている。これらがそろっていることが大きなポイントである」と岡氏は語っている。

 既に国内でもOPC UAの採用事例などが生まれつつある。例えば、出光興産では2019年8月に、複数の製油所や事業所で構成される大規模生産システムの主要通信方式として「OPC UA」を採用したことを発表(※)。さまざまな製油所内での通信の相互運用性を確保すると共に、セキュリティ面での期待を寄せている。岡氏は「日本でも大きな導入事例が出てくるようになった」と手応えについて述べている。

(※)関連記事:出光興産、プラント生産システムの通信方式に「OPC UA」を全面採用

 OPC Foundationではさらなる相互運用性を求めて、対応領域を拡張する方針を示している。その取り組みの1つとして、コントローラー間やコントローラーとフィールド機器間の情報連携を実現する「Field Level Communications(フィールドレベルコミュニケーション、FLC)」を用意する。2018年11月にはOPC Foundation内にFLCを推進するイニシアチブを組織し、規格の策定などを進めている。このFLCのベースとなるのが、TSN(Time Sensitive Networking)技術である。TSNはイーサネットをベースにしながら時間の同期性を保証しリアルタイム性を確保できるようにしたネットワーク規格で、物理層などはそのままに、時刻同期や優先的に通すデータを制御する機能などを加えることができる特徴などを持つ。

 TSN対応が進めば、同じネットワーク配線や機器上を複数のフィールドネットワーク規格の通信が流せるようになる他、タイムスタンプなどの同期などにより、フィールドネットワーク規格を越えて、情報連携などを行えるようになる。このTSNを前提とし、各種フィールドネットワーク間を容易に連携できるようにするためFLCが考案されたという。

 岡氏は「さまざまな取り組みを進めているが、全ては産業領域で相互運用性が本当に実現できる世界を目指すということだ。このビジョンに向けて取り組みを進めていく」と考えを述べていた。

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