DXを可能とするe-F@ctotyには鍵となるFA-IT連携技術、制御技術、産業用ネットワークの各技術がある。FA-IT技術は生産現場とITシステムを簡単に接続するほか、データをリアルタイムに一次処理し、意味あるデータに成形するものだ。制御技術は自動化に必要なロボット技術やセンサー機器を統括制御し、生産現場から必要なデータを収集する技術などが含まれる。産業用ネットワーク技術は生産現場での大量データを高速通信したり、効率的に収集したりする技術であり、FAとITの融合、異なるネットワークの混在技術などがある。このように、現場のデータ活用するための基本技術の開発を同社では行っている。
具体的なデータ活用の事例として、同社名古屋製作所内での実績を紹介する。フェーズ別で見てみると、設計フェーズでは設計時間の短縮、現地調整時間の短縮、品質の作り込みなど行うために、3Dシミュレーター、CADなどエンジニアリングツールの連携により、デジタルツインの構築に取り組んでいるという。
製造フェーズでは、生産工程における停止・品質ロスの改善を図るため、センサーや制御機器をネットワークでつなぎ、あらゆるデータを可視化、分析・改善、その結果を制御に戻すというサイクルを構築した。この、設備の稼働管理システムによる品質ロスの削減と生産管理システムとの連携によって、部品の自動発注なども実現した。また、省エネの観点から稼働に応じた自動運転の取り組みなどにより工場建屋の空調や排気の定格運転ロスの低減にもつながっているという。
保守メンテナンスのフェーズでは「24時間止まらない工場」「ダウンタイムの短縮化」の2つを目標とする。これを実現するために「予知保全」「予防保全」「事後保全」の3つのステップを考えており、予知保全では、AI技術を活用しデータ分析・運用を行うデータ分析支援ソフトウェア「リアルタイムデータアナライザ」や、すぐに使えるアプリケーションパッケージ「iQ Monozukuri」などをそろえ、現場のデータ分析や設備診断を支援している。
三菱電機では、今後、ロボットやAI分野にDXを取り入れ、人手不足、熟練技術の継承などの製造業の課題解決を進める。人手不足に対してはロボットとの協働や自動化により、人は単純業務から解放され、付加価値の高い業務に専念することができる。熟練技術の継承は人とAIの協働により、匠の知見が誰でも活用可能となり、データ分析が進めば人の知見以上も獲得する可能性も出てきた。「今後はロボットやAIがますます身近な存在となる。作業を代替する『行動のDX』、人の考えやノウハウを拡張する『知見のDX』、という2つの方向性でさらなる活用が進むだろう」と都築氏は指摘する。
ロボットの先端技術としては、素早くよける技術による新たな産業用ロボットを提案している。同社ではバラ積みされた部品を認識し的確にピッキングを行うため、AI技術の「Maisart」とビジョンセンサーを活用。また、ロボット周辺の作業環境をセンサーで取得し、動作経路上の障害物を確認しながら、回避経路を生成し動作を継続する。「Maisart」と力覚センサーにより、繊細な力加減でつかんだ部品を高速・高精度で組み付けを行う。
「Maisart」はアルゴリズムのコンパクト化により、演算負荷を低減したことで高性能のマイクロプロセッサをもたない組み込み機器にAIを組み込むことが可能だ。そのため、現場にAIを配置することができる。その特徴を生かした活用事例として、「AI技術によるサーボシステム位置決め指令パラメータの最適調整」がある。それまで小さな電子部品を素早く実装するには、サーボのパラメータ調整を、振動を抑えながら精密な位置決めが必要であり、熟練者が1週間以上をかけて調整していた。それをAI技術によるサーボシステム位置決め指令パラメータの最適調整により、自動で最適化し、立ち上げ時間を大幅に短縮した。
この他、三菱電機では「DXを実践していくためには1社では不可能」として、オープン化を推進している。2011年には「e-F@ctory Alliance」(オープンアライアンス)を発表。現在750社が参加している。2017年には「Edgecrossコンソーシアム」(オープンプラットフォーム)を発足させている。三菱電機はデジタル技術の進化により、これまでのプロセスを順につなぐチェーン型から、全てのプロセスがリアルタイムにつながり、さまざまな立場の人がデータを活用できるネットワーク型のモノづくりへビジネスモデルが変革する方針を示している。
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