また、「ひろしまサンドボックス」推進協議会という独自の取り組みも進めている。サンドボックスとは規制などの制約を受けない閉鎖環境を作りその中でさまざまな実証を行う取り組みのことだ。「われわれが3年間で10億円を用意するので、これまで誰も試したことがない技術や、作ったことがない製品、ソリューションに挑戦してみるというプロジェクトだ」(湯崎氏)という。2019年は開始から2年目を迎えるが、実績も上がってきたという。
成功例としては、広島特産のレモンの栽培を、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島において、オール自動化する取り組みなどがある。大崎下島では、センサーで土壌の水分や日照、気温などの情報を測定し、AIで解析し、最適な栽培を行うなど「農家の技を自動化」している。さらに、ドローンやロボットを使い、摘花などの作業も自動化した。また、水産業の主力産品であるカキの養殖もデジタル化に取り組んでいる。海水の養分や水温の変化などの研究を行い、最先端のスマート養殖を目指している。特にドローン飛翔によるリモートセンシング、リアルタイム動画分析による物体認識などを含めた技術の導入を一般企業、大学、自治体などのコンソーシアム作り、行っている。
サンドボックスには、現在700を超える会員が加盟し、9つのプロジェクトを進めている。通信事業者やエネルギー関連企業などから自社のプラットフォームを格安あるいは無料で提供してもらえるなどのサポートがあることから、今後も、新しい取り組みを拡大していく。
さらに広島県はDX推進本部を設けて「広島県のあらゆるものをDX化していく」(湯崎氏)と、一層のDXの取り組みを強化する方針だ。その上で主に3つの柱を考えている。行政のDX、仕事・暮らしのDX、地域のDXで、この他、行政およびより広範囲のデータのオープン化を加えていくことも検討する。
暮らしDXの分野では道路の維持管理がある。広島県内では、道路に沿って法面が1140kmあり、崩壊などの危険性が指摘される。それに対して「今は一定の降雨があった場合、通行止めにすることで対処しているが、それでは不便である」(湯崎氏)ことから、それを降雨があった後の法面の管理をセンサーやドライブレコーダーの映像などにより崩壊などを検知する予測保全の技術で対応していく。
また、移住定住を支援する活動にもDXを導入する。多忙な相談員(県職員)の作業を軽減するもので、作業員のノウハウのAI化を進めている。子どもの見守りにも、ハイリスクがあると見なされた家庭のデータを総合してAIと人間が協力して子どもの虐待防止などに生かす。
この他、広島県の行政データは「広島県オープンデータIoTプラットフォーム」の構築で、さらに各種データのオープン化を進める。広島県では「さらなる領域でデジタル化によるオープン、アジャイル、チャレンジの3つの視座で変化し、各分野で成果を求め続ける」(湯崎氏)という方針を示している。
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