地域が起こすデジタル変革の力、広島県の取り組みCEATEC 2019(1/2 ページ)

「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)で広島県知事の湯崎英彦氏は「広島発デジタルトランスフォーメーション〜日本が目指すべきDXの姿〜」をテーマに講演を行った。異色の経歴を持つ県知事による広島県での取り組みを紹介する。

» 2019年12月16日 11時00分 公開
[長町基MONOist]

 「地方創生」などが叫ばれる一方で、人材確保などの面から地方経済の振興にはさまざまな課題があり、各地の自治体は苦しんでいるのが現状である。その中で「デジタル変革(DX)」を切り口にさまざまな取り組みを進めているのが広島県だ。「CEATEC 2019」(2019年10月15〜18日、千葉県・幕張メッセ)で広島県知事の湯崎英彦氏は「広島発デジタルトランスフォーメーション〜日本が目指すべきDXの姿〜」をテーマに講演を行った。異色の経歴を持つ県知事による広島県での取り組みを紹介する。

イノベーション立県を掲げる広島県

 人口減少や少子高齢化による日本全体の経済縮小が進み、東京一極集中モデルに限界がきている中、日本の活力と競争力を維持していくために地方発のイノベーションが求められるようになっている。その中で広島県では「イノベーション立県」を掲げDXへの素地を築いてきた。

photo CEATEC 2019で講演を行う広島県知事の湯崎英彦氏

 湯崎氏は経済産業省出身で、2000年に電気通信事業者のアッカ・ネットワークスを立ち上げた(副社長)実績を持つ。2009年には広島県知知事選に出馬し初当選。2017年には三選を果たしている。現在、広島県を「1st MOVER in DX」にすることに力を注ぎ、さまざまな改革を進めているところである。

 湯崎氏は広島県でDXに取り組む理由について「日本の縮図のような環境がある」と説明する。「自然と都市が融合した環境があり、さらに人口や所得などが日本の平均的なものであることで、日本の縮図として各種のソリューションを作っていく上で、各種条件を試し適応させる実験の場になり得る」と湯崎氏は説明する。

 現在、広島県で実際にデジタル化を進めているものの1つとして水道事業がある。「水みらい広島」として、公共部門に民間ノウハウを取り入れた施策を進めており、「前時代的に行われている資産管理をデジタル化することで、現場の状況をデータ化するとともに、本部にある図面データをタブレット端末などで現場に持ち込み、現場の状況と突き合わせることなどを行っている」(湯崎氏)。こうした取り組みで、将来的に人口が減少していく社会において、水道事業の効率化を目指す。

 また「イノベーション・ハブ・ひろしま Campas」というネットワーク作りも実施している。新ビジネスや地域づくりにチャレンジする人が集まる拠点を設けて、さまざまな業界・業態の人が切磋琢磨し、化学反応が起きるような組織の構築を目指しているもので、既に新しい製品も誕生した。この活動を通じて広島県におけるエコシステム作りも進める。

 DX関連では、「ひろしまものづくりデジタルイノベーション創出プログラム」というプログラムも進行中である。モノづくりのデジタル化を産官学が連携して推進し、モノづくりのバリューチェーン全体のデジタル化に挑戦している。地元の自動車メーカーであるマツダが取り組む自動車の生産、開発におけるデジタル化のノウハウなどを地域に展開する取り組みなども進めている。特に開発にはMBD(モデルベースドデベロップメント)をベースに材料の研究の段階からデジタルシミュレーションを行い、一気通貫で製品開発を行っているが、こうした取り組みはさまざまな製造業でも活用できるため「各種メーカーに参加してもらうことで、広島県におけるモノづくりのベースとなることも期待している」と湯崎氏は語る。

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