そんなわれわれの挑戦を振り返ると、2017年はラスト半周でガス欠(4時間は走り切ったので完走扱い)という悔しい結果に終わり、2018年は大荒れの天候に翻弄され3時間に短縮されたことで、燃費制限がなくなってしまったこともあって、下から3番目の25位という散々な結果だった。今回は2017年のデータを生かし、大幅に順位をアップさせてゴールしようという計画を立てた。
2017年、2018年と燃費計算によるペース配分を決めたMONOist編集部の松本氏が、今回もレース中の司令塔となる。一応、各ドライバーの目標平均ラップと平均燃費は打ち出されていて、それを目標にラップを重ねることになるが、レース中に何が起こるか分からない。ハプニングに応じて、臨機応変に作戦を微調整することが司令塔には求められる。
今回の予選は、山口選手が担当。予選結果でスタートの順位が決まるわけだが、われわれの作戦にはこの順位はあまり影響がない。日頃の練習不足を少しでも補うために、5人のドライバーのうち1人が練習走行を兼ねて予選を走り、残る4人は公式練習で肩慣らし。そうして決勝レースに臨むというのが、われわれのセオリーである。
2018年は決勝中にベストタイムを1秒近く縮める快走を見せた山口選手であるが、思う存分走っていいハズの予選ではタイムが伸び悩む。どうやら彼も、予選の洗礼を受けることになったようだ。
結果として“予定通り”予選最後尾のポジションを獲得。しかしピットに戻ってきた山口選手のダメージは、思いの外大きかったようだ。
「こ、怖かったぁ〜」
恐ろしい勢いで後ろから迫ってくる他チームの予選アタッカーに攻め立てられ、思うように走れず、本来の走りをすることすら叶わなかったのだ。
レースでは追い抜き方だけでなく、抜かれ方も非常に重要なテクニックとなる。耐久レースの決勝ではなおさら重要だ。いかにタイムロスを抑えて、目を三角にして走っている連中の邪魔にならずに周回を重ねるかも、われわれに必要なテクニックと言えるだろう。
そんな戦慄の予選が終わり、ピット裏で調理中だったカレーができ上がったようなので、昼食としていただく。今年はカレーライスをピットで作り、チームスタッフ全員で食べたのだ。正直レース中の食事なんて、コンビニで買ったモノでも何でもいいとこれまで思っていたのだが、実際に白米を炊いてその場で作ってもらったカレーをかけて食すると、何だか今までにない充実感を覚えた。
朝、早起きして下ごしらえをしてきてくれたのだろう。現地ではほぼ材料を煮込んで、ご飯が炊ければOKという状態まで用意してくれたサポートメンバーの方々には頭が下がる思いだ。
さていよいよ決勝レースのスタート時間が迫ってきた。スターティングドライバーは2018年と同じく斎藤選手である。愛車はドイツ製スポーツカーでK4GP(軽自動車カテゴリーによる耐久レースイベント)に出場しているほどのクルマ好き、ドライビング好きながら、その表情はいつも飄々としていて余裕を感じさせる。
今回のメディア4耐は、トヨタ自動車社長の豊田章男氏が参戦。「MORIZO」として第1ドライバーのハンドルを握った。「メディアのレースになぜトヨタが?」となるわけだが、俳優の香川照之氏が編集長を務めているトヨタ自動車のオウンドメディア「トヨタイムズ」として出場するという筋書きだ。
トヨタの社長がライバルメーカーのレースに参戦するとあって、多くのマスコミがこの1走目に注目していた中、斎藤選手は今年も見事に淡々と走り切った。しかし後から考えてみると、最も暑い時間を安定したペースで走り切るのは、かなりキツいハズ。しかも本来ピットインするハズの周回では前後のピットにマシンが止まっていたため、予定より多く走っての交代だったことを考えると……斎藤選手、やはり相当にタフだ。
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