トヨタ社長も参戦した2019年メディア4耐、ITmedia×MONOistチーム大躍進のワケモータースポーツ(4/5 ページ)

» 2019年10月21日 06時00分 公開
[高根英幸MONOist]

タイヤの消耗が予想以上で、ラップタイムが伸び悩む

 柿澤選手はわれわれチームのドライバーの中でも、ミニサーキットの耐久レースに参戦し続けている現役のアマチュアドライバー。「ハマると速い」期待のドライバーなのだが、3番手となったことで、厳しい状況に陥ってしまったようだ。というのも、2番手の西坂選手があまりにもいいペースで走ってしまったこともあり、タイヤの消耗が予想以上に進んでいたらしい。柿澤選手には快走した2017年の再現を期待していたのだが、周回を重ねても思うようにペースを上げられない。

 「タイヤがグリップしない〜」とドライバー交代の時に筆者にも報告してくれたほど。どうやら午前中の公式練習の時とはまるで異なるタイヤの反応に、柿澤選手はかなり戸惑ったようだ。

 しかも燃費が思うように伸びない。それでも最後のラップで決勝中のベストタイムを更新して面目躍如は果たしたものの、燃費は全体として想定より悪い。このままでは計算上、わずかに燃料が足りなくなる。2017年のようなガス欠という結末は御免だ、何とかせねば。

photo 3番手の柿澤選手から筆者へとドライバーチェンジ。この時に給油もするため、ピットストップは3分間。燃費を改善できる走りをイメージして、コースへと飛び出した(クリックで拡大)

 松本氏は事前に伝えていたペース配分から目標燃費を変更し、新たな目標を導き出して筆者に伝えた。

 「平均燃費を6.5km/L以上にしてください」

 これは想定していた燃費より、かなり高い数値だ。しかも筆者が走る区間だけではなく、これまでの平均燃費を継続しての燃費向上だから、実際には少なくとも6.6〜6.7km/L以上で走らないと実現できないことになる。

 かなり厳しい要求だが1発の速さではなく、マシンの状態や状況判断とそれに応じたドライビングができることを買われての筆者へのドライバー要請、ここで貢献できなければ存在価値はない。

 今年は少しだけ攻めた走りをしたいと思っていたのだが、違った方向性での攻める走りを求められることになった。だがそれも、耐久レースの面白さの一つだ。これぞチームプレイ、これぞ耐久レースである。

 コースに飛び出して数周は、マシンの感触を確かめながらも、後方から迫ってくる上位チームの邪魔にならないように走る。公式練習時には、決勝を想定して燃費走行しても2周目にはほぼ想定のラップタイムに到達したのだが、柿澤選手の報告通り、タイヤのグリップ感が希薄で同じように走ることはできない。それでもやるしかない。その場でクルマの状態に合わせて走り方を考えながらドライビングを続ける。

 そんな要求に加えて、上位を走るチームのラップタイムの速いこと! 前よりバックミラーを見る割合を多くしなければ、とてもスムーズかつ安全には走れない。できる限りタイムロスを抑えて、燃料とタイヤを温存するためには、こんなシーンでも全く気が抜けない。

photo 休憩する松本氏に代わって、今回からチームに加わった迫野さんが無線担当に。暑さと後方から追いまくってくるマシン、グリップの低いタイヤの中、燃費走行しても平均燃費が上がらない中でも、「頑張ってください!」と女子からの無線のおかげで、心が折れずに済んだ。ひょっとして、これも松本氏の作戦だったのだろうか(クリックで拡大)

 それにしても燃費走行を心がけても平均燃費はなかなか上がらない。柿澤選手も「5速まで使っても、何やっても燃費が全然変わらない〜」と言っていた通り、かなり燃費に気遣った走りをしても、平均燃費計の数字に変化がない。ある一定のレベルまでは燃費がいいパワートレインゆえの現象だ。

 それに自分の周回だけの平均燃費ではなく走行距離が多いためなかなか数字が変わらないので、モチベーションを保つのが難しい。それでも諦めずに、燃費を向上させるためのテクニックや走り方を工夫してみる。あの手この手と燃費向上策を繰り出し、20周ほど走ったところで、ついに目標燃費を達成! ラップタイムは伸びないが、それはタイヤの摩耗も抑えているため仕方ない。むしろタイムがそれほど落ちないことに驚いたくらいだ。

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