3D CADで設計した3Dデータから切削加工で部品を作ろうとした場合、加工プログラム(NCデータ)を「CAM」で作成します。
切削加工を主業務として行っている会社からすると、3D CADよりもCAMの必要性の方が高いでしょう。一般的にCAMソフトにはCADの機能(モデルの修正や追加など)も一部搭載されていますが、機能が限定的であるため、例えば、アセンブリなどの部品を組み立てるといった、3D CADでは当たり前の機能は搭載されていません。あくまでも、加工に必要な機能に限られているということです。
また、先ほどのCAEソフトと同様に3D CADソフトにCAM機能が統合されているもの、後から追加で搭載できるものがあります。CAEソフトでもそうですが、統合型のメリットとしては、3D CAD上でのモデルの変更が、CAEやCAMにもシームレスに反映されるという点があります。
CAEと同様に、CAMソフトの導入が将来的に必要かどうかで、3D CADソフト選びも変わってきます。そして、CAMソフトを選ぶ際には、加工プログラムの作成の自動化をどこまで考えるかが、1つのキーポイントになります。
ソフト上で時間をかけて細かな加工条件の設定を行い、実際の加工時間を短縮して、より良い品質のモノを作りたいのか、ソフト上でできるだけ入力せずに形状を自動認識させて、半自動的にプログラムを作成し、できるだけ早く加工作業に進みたいのかなどによって、選ぶ基準は変わってきます。もちろん、テンプレート化やマクロなどを組むことで、両方を満たすことができるCAMソフトもあります。
CAMソフトを選ぶ際、削った物を見せてもらうことも大切です。人がCAMに入力する数値などの設定項目や、削る工作機械のスペックによっても異なってきますが、CAM機能の違いによって、削った物の品質や加工時間が変わってくる場合があります。実際に、加工担当者の声をよく聞いて検討しましょう。
最後は、3Dデータを閲覧できるビュワーソフトについてです。例えば、3D CADで作成した3Dデータを社内全体で展開したい場合、全社員に高価な3D CADソフトを買い与えるというのは非常にコストもかかり、現実的ではありません。
3Dデータを作成するには3D CADが必要ですが、3Dデータを閲覧するだけであれば、今は無料のソフトもありますので、それらを活用することをオススメします。3D CADソフトに付随しているものもあれば、Webブラウザ上で閲覧できるものもあり、有名なものとしては、3D PDFがあります。また、オフィス業務でも利用されている無償PDFビュワーソフト「Adobe Acrobat Reader」でも3D PDFという形式により3Dデータを閲覧できます。ちなみに、3D PDFデータへの変換に対応している3D CADソフトと、そうでないものがありますので、導入前に調べておきましょう。
3D CADデータを3D PDFに変換する専用の有償ソフトなどもあります。3D CADで作成した3Dデータを社内にどのように展開していくかも導入前に検討しておきましょう。3Dデータを社内全体で共有することで、より使いやすい、より作りやすい、より良いアイデアが生まれやすい環境が構築できます。
有料ソフトの中には、人体模型を配置して、作業性やメンテナンス性などの確認ができたり、組立手順書や生産ラインを作成できたりするものもあります。設計者が作成した3Dデータを活用して、生産技術者が生産性を検討するということも可能になります。
今回は、3D CAD、CAE、CAM、ビュワーソフトの選び方について紹介してきました。共通していえるのは、“会社の将来像を見据えたソフト選びが重要だ”ということです。将来どのようになりたいのか、その理想やビジョンを明確にし、そのために、現在の業務プロセスをどのように変えていきたいのかを突き詰めていくことで、自ずと必要なソフトも決まってきます。
もう1つ重要なのは、こうした検討、ソフト選びはたった1人で行うのではなく、経営側、技術側、現場側の人たち、社内全体を巻き込んで検討することが理想です。とにかく焦りは禁物です。今回の内容を参考に、時間をかけて選定すればきっと自社に合ったソフトウェア環境と出会えるはずです。 (次回に続く)
小原照記(おばら てるき)
いわてデジタルエンジニア育成センターのセンター長、3次元設計能力検定協会の理事も務める。3D CADを中心とした講習会を小学生から大人まで幅広い世代の人に行い、3Dデータを活用できる人材を増やす活動をしている。また企業の困り事に対し、デジタルツールを使って支援している。人は宝、財産であると考え、時代に対応する、即戦力になれる人財、また、時代を創るプロフェッショナルな人財の育成を目指している。優秀な人財がいるところには、仕事が集まり、人が集まって、より魅力ある街になっていくと考えて地方でもできること、地方だからできることを考えて日々活動している。
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