「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

ドアtoドアの空飛ぶクルマに挑む、日本人連続起業家を支える3つの力とはイノベーションのレシピ(2/3 ページ)

» 2019年09月27日 10時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

東京で2度目の起業、厳しい状況を切り抜け4000万ドルでエグジット

 WBOの経営が軌道に乗ってからガイ氏と結婚し、3人の子どもをもうけた真紀氏。しかし2011年2月に、12年間住んだイスラエルを出て日本に戻ることにした。母親が難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)であることが分かったためだ。

 東京で母親と同居する傍ら、新たに2社目となる起業に取り組んだ。それが、コーディングなしでアプリケーションを開発できるソフトウェアを手掛けるIQPだ。IoT(モノのインターネット)時代を迎えた現在、さまざまな現場で簡単にアプリケーションを開発できるツールが求められているが、IQPのソフトウェアはその先駆けとなるものだ。

2社目に起業したIQPとその代表的な顧客 2社目に起業したIQPとその代表的な顧客(クリックで拡大) 出典:NFT

 2017年7月に、GEが4000万米ドルで買収したことにより、スタートアップのエグジットの成功例として挙がることも多い同社だが、当時は日本国内にスタートアップは今ほど多くない上に、技術者などからは「コーディングなし」という特徴へのネガティブな意見が集中した。

 当時はまだIoTという言葉も知られておらず、IQPも苦戦を余儀なくされた。開発パートナーが得られない中で、IQPは自社で全ての開発を行う決断を下す。真紀氏は、銀行の預金を切り崩しながら開発を続けていたが、2014年ごろからIoTがバズワードとなり、IQPの掲げるコンセプトも注目を集めるようになった。そして、数社によるトライアルライセンスの評価を受けた後、2015年に600万米ドルの投資を受けるところまでこぎつけた。

 ここでIQPをもう一段押し上げたのが「3つの力の3つ目、『ピボット力』だった」(真紀氏)という。IQPは、顧客対応などは東京、開発はイスラエルで行う事業体制だったが、ここで本社拠点をシリコンバレーに移すことを決めたのだ。日本ではトライアルライセンス以上の広がりを見せていなかったが、斬新なイノベーションを受け入れやすいシリコンバレーに移ることで、事業拡大のきっかけをつかむことに成功。2017年夏のGEへの売却につなげることができた。

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