中小製造業ながらさまざまなベンチャー育成に取り組んでいる浜野製作所は「モノづくりの要件が定まらず、なかなか製品をリリースできない」など、モノづくりの悩みをもつ個人、法人を対象に「モノづくり相談サービス」を開始した。
中小製造業ながらさまざまなベンチャー育成に取り組んでいる浜野製作所は「モノづくりの要件が定まらず、なかなか製品をリリースできない」など、モノづくりの悩みを持つ個人、法人を対象に「モノづくり相談サービス」を開始した。
各種産業機器の部品や筐体の設計開発などを行う浜野製作所は1978年に創業。従業員数は53人で本社周辺に5つの工場を構える。金属の部品加工をメインに、量産向けの金型、部品のプレス加工なども手掛けている中小製造業である。その一方で、2014年からは社会課題解決や新しい価値の提案に挑戦する起業家や新規事業担当者を製造業の立場で支援するモノづくり開発拠点「Garage Sumida(ガレージスミダ)」を運営している(※)。
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これまで、台風発電の「チャレナジー」、パーソナルモビリティの「WHILL(ウィル)」、フィンテックの「ポケットチェンジ」、ロボットの「アスラテック」など数多くのハードウェアスタートアップのサポートを行ってきた。2019年6月には経済産業省の「モノづくりスタートアップ・エコシステム構築事業」に採択されたスタートアップの製品化や量産化の支援を行うことを決め、人工知能を使った自動野菜収穫ロボットの「inaho」、足のトラブルを解決して健康寿命を伸ばすカスタムインソール製造の「ジャパンヘルスケア」など3社の支援に乗り出している。
これらのベンチャー支援を行う中での浜野製作所の強みについて、浜野製作所の代表取締役 CEO 浜野慶一氏は「製造現場に直結していることで開発速度を加速することができる他、アイデア、構想から試作や量産に至る工程に的確なアドバイスができる経験がある。さらに、熱い起業家を育てたいという思いもある」と語る。これらの特徴を生かしながらより広く浜野製作所のリソースを活用してもらうために今回、「モノづくり相談サービス」を開始することを決めた。同サービスを通じて、製造方法やサプライヤー探しなどを含めた製品化へ向けたサポートを行う。
具体的には、ポンチ絵から形にするまでのプロトタイプ作りに必要な条件を整理し、企画書や仕様書、構想設計などのアウトプットのチェックを行う。基本的には原理試作品ができるまでを支えていくという。また、原理試作、開発目的、スケジュール、予算感を基に最適な開発体制やプロセス、生産技術リサーチ、開発要件定義サポートなど、実際に試作品を完成させるまでの工程も支援。加えて、市場に投入する最終プロダクトの相談にも応じるという。
料金体系は月額制(利用期間1カ月〜)で、スタートアップ割引なども用意する。施設に短期入居してモノを作る「モノづくり集中プラン」なども用意している。
浜野氏は「日本の町工場の大半は、できれば大手企業と安定して継続した部品加工を行いたいと考えているが、そういう環境では徐々になくなってきている。東京は町工場を構えるにはデメリットが多い場所だが、目線や枠組みを変えることでメリットを引き出すことができると考え、ガレージスミダを立ち上げた。われわれには板金や金型、溶接などモノを作る上での基盤技術がある。日本でもIT、ソフトウェア、コンサルティングなどの技術を追求した企業が誕生しているが、そうした企業が新たに工場を設けることは難しい。今後こうしたソフトウェアとハードウェアの結び付きが強くなる中で、協力して日本のモノづくりを支えていく必要がある。目指すのは都市型の先進モノづくりだ」と2019年7月に開催したスタートアップとの交流会で方針を述べた。
同社では、ハードウェアスタートアップ向けの相談会の他、こうした最前線で活躍しているベンチャー企業、今後本格的な起業を目指す候補者、学生、研究者、町工場関係者などが集う交流会や、スタートアップや企業の新規事業担当者が集まり、「アイデアを形にしたい」「試作品から量産する方法」などの相談が可能な「匠相談会」などを実施している(※)。
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