オートデスクの3D CAD/CAM/CAEソリューション「Fusion 360」に搭載されているジェネレーティブデザイン機能を活用し、“はじめてのジェネレーティブデザイン”に挑戦する。第1回は「『Fusion 360』のジェネレーティブデザイン機能の使い方」について取り上げる。
皆さん、はじめまして。濱谷健史と申します。普段は株式会社VOSTにて3D CAD/CAM/CAEを広く使っていただくため、製造業のお客さま向けにトレーニングをしたり、実際にいろいろなモノを3Dでモデリングして、3Dプリントしたり、切削加工をしたりしています。3Dプリンタの普及や、個人が無料で利用できる3D CAD「Fusion 360」の登場に伴い拡大する、学生や一般ユーザーの方たち向けにも講習会を開催しています(サービス名「ビズロード」「スリプリ」)。
そんな筆者が今回、「はじめてのジェネレーティブデザイン」と題して連載を執筆することになりました! 記念すべき連載第1回のテーマは「『Fusion 360』のジェネレーティブデザイン機能の使い方」です。少しでも「ジェネレーティブデザイン」が身近に感じてもらえるよう頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
Fusion 360は、Autodesk(オートデスク)が提供する高機能3D CAD/CAM/CAEソフトです。Fusion 360が注目を浴びているのは、“使いやすさ”が突出しているからだと筆者は考えます。
Fusion 360のような高性能な3D CAD/CAM/CAEが使用できるようになると、製造業のさまざまな場面で活用できます。3Dモデルやデザインデータの作成はもちろんのこと、製造業で使用する金型や治具データの作成など、幅広い分野で使用可能です。他にも、レーザーカッターで出力するデータの作成、工作機械を動かすための加工プログラムを作成するCAM機能も備わっているので、業務用としても十分活用できます。最近では、木工ルーター機で3D加工を行う企業が増えてきています。また、CAE機能を有しているため、誰もが簡単に構造解析を実施できます。
その他、3Dプリンタで出力できるデータの作成も可能なので、フィギュアやクッキー型などの立体物の設計から製作まで、趣味で利用される方も多く、注目されています。
従来は高価で導入しづらい3D CADでしたが、Fusion 360は学生や教育機関、非営利団体の方であれば“無料”で使用できるため、趣味や研究の幅を広める際にも役立ちます。
そんなFusion 360ですが、2018年末に“ある機能”が正式追加され話題になっています。それが本連載の主役であるジェネレーティブデザインです(図2)。
ジェネレーティブデザインを一言で表すと、
コンピュータが与えられた条件の中で、多数のデザインモデルを提案してくれる機能
ということになります。コンピュータが計算を行い形状を導き出しますので、今はやりのAI(人工知能)も内部で使われているそうです。
Fusion 360のジェネレーティブデザインは、大きく分類すれば「トポロジー最適化(位相最適化)」の中に区分されますが、これまでの一般的なトポロジー最適化が“1対1”でモデルを生成していたのに対し、Fusion 360のジェネレーティブデザインは、数百ものモデルを提示してくれます。
ここで大切なのは“一般的なトポロジー最適化”が、モノづくりのエンジニアリング工程で、構造解析を行う工程と同様のフェーズで利用されてきたのに対し、ジェネレーティブデザインは、デザインモデルを起こす初期段階からエンジニアリングの段階まで、幅広い工程での利用が可能だ、という点です。
これまでは、解析の専門知識や高価なシステムを利用できる人の数は限られていました。しかし、Fusion 360を利用すれば、使いたい時に、必要な分だけ使うことができるので、誰もが安価に最新技術に挑戦できます(※注1)。
※注1:計算には、クラウドクレジットが必要です。
3D CADの活用メリットの1つとして、3Dモデルを利用して構造解析をすれば、試作の回数が減らせる、といった「設計者解析(設計者CAE)」というアプローチがあります。もちろんこれは正論だと思いますが、せっかく構造解析の勉強を始めるなら、さらに一歩進んで、ジェネレーティブデザインで同時に3Dモデルを作成してみませんか? というのが筆者の考えです。もちろん、本連載をきっかけに初めて3D CADに触るという方にもオススメしたい技術です。
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