ソフトバンク子会社でインターネットエクスチェンジ(IX)事業を手掛けるBBIXと、さくらインターネットは、モバイルネットワークソリューションを提供する合弁会社のBBSakura Networksを設立すると発表した。
ソフトバンク子会社でインターネットエクスチェンジ(IX)事業を手掛けるBBIXと、さくらインターネットは2019年7月29日、東京都内で会見を開き、モバイルネットワークソリューションを提供する合弁会社「BBSakura Networks株式会社(以下、BBSakura)」を同年8月1日に設立すると発表した。さくらインターネットのIoT(モノのインターネット)向けマルチキャリア対応SIMサービス「さくらのセキュアモバイルコネクト」に用いられているモバイルコアを中核に、5Gに対応可能なソフトウェアベースの通信システムを構築し、国内のMVNO事業者や、今後5Gの導入を見据える東南アジアの通信キャリアなどに提案を進めて行く方針だ。
BBSakuraの資本金は2億円で、BBIXが51%、さくらインターネットが49%を出資する。代表取締役社長にはBBIX 技術本部 本部長の佐々木秀幸氏が、取締役COOにはさくらインターネット IoT事業推進室 室長の山口亮介氏が就任。残り4人の取締役として、BBIXとさくらインターネットからそれぞれ2人が入る。BBIXが資本の過半を持つものの、本社はさくらインターネット 東京支社内(東京都新宿区)に置くなど「両社で共同して事業を展開する体制になっている」(佐々木氏)。社員数は22人で、これも両社から出向することになる。
BBSakura設立の背景には通信機器のソフトウェア化の加速がある。佐々木氏は「1990年代、日本の通信機器メーカーには一定の存在感があったが、現在はかなり低下している。これは、通信機器のソフトウェア化と無縁ではない。そこで、通信事業のことをよく知るBBIXと、クラウドを活用したモバイルコアにより通信機器のソフトウェア化で実績を積み重ねているさくらインターネットの両社が協力して、ユニークなソリューションを世界へ展開したいと考えた」と説明する。
BBSakuraの設立に合わせて、さくらインターネットから、さくらのセキュアモバイルコネクトのモバイルコアの開発資産が移管される。さくらのセキュアモバイルコネクトの事業は、引き続きさくらインターネットが手掛けるが、モバイルコアなどの中核技術はBBSakuraが手掛けることになる。BBSakura設立後は、モバイルコアを核とするモバイルネットワークソリューションを、BBIXが香港やシンガポールを拠点に提供している国際ローミングサービス向けのローミングピアリングエクスチェンジ(RPX)サービスなどの営業接点を生かして東南アジアを中心に展開を拡大して行きたい考えだ。山口氏は「5年後をめどに数十億円の売上高規模を目指したい」と述べる。
BBSakuraが開発を引き継ぐモバイルコアとしては、既にHSS(Home Subscriber Server)やPCRF(Policy and Charging Rule Function)、PGW(Packet data network Gateway)などが開発済みで、全てクラウド上で運用されている。「フルMVNOサービスであるさくらのセキュアモバイルコネクトを提供するために、ソフトウェア+クラウド+ネットワーク仮想化を自社実装しており、コストや機能に対して圧倒的な柔軟性がある」(山口氏)という。
次世代携帯電話通信技術である5Gは、既に米国や韓国でサービスが立ち上がっており、2020年以降は中国や日本でも本格的なサービスが始まる予定だ。5Gは、従来の4Gと比べて、高速大容量、低遅延、多接続などの特徴があり、これらの特徴を生かしたいユーザーの要求は多様化、高度化する可能性が高い。佐々木氏は「BBSakuraで開発を進めるモバイルコアを中核とするソフトウェア技術があれば、それらの要求に柔軟に対応できる」と説明する。
また5Gでは、用途に応じて通信ネットワークを仮想的に分割する「ネットワークスライシング」や、通信基地局の近くに高負荷処理などを行うサーバを配置する「モバイルアクセスエッジコンピューティング(MEC)」などの利用も想定されている。これらを活用する際にも「BBSakuraのソフトウェア技術を生かせる」(山口氏)という。
BBSakuraの主な顧客として想定しているのは、今後後発で5Gの導入を進める国や地域の通信キャリアだ。また国内については、MVNO事業者の他、プライベートLTEやローカル5Gのサービスを提供する事業者も顧客になり得るとしている。
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