IDC Japanは、国内でIoT事業を推進するベンダーや企業の「データエコシステム」に対する取り組み状況の調査結果を発表した。
IDC Japanは2019年7月22日、国内でIoT(モノのインターネット)事業を推進するベンダーや企業の「データエコシステム」に対する取り組み状況の調査結果を発表した。
IDCは、全世界のIoT機器の普及台数が2018年の228億台から2025年に416億台に達し、IoT機器が年間に生成するIoTデータの総量も2018年の13.6兆GBから2025年に79.4兆GBに達すると予測している。
こうした高い成長が見込まれる市場に対し、さまざまなベンダーがIoTプラットフォームを基軸としてソリューションの提供を開始しているものの、昨今ではIoTで共通的に使われる汎用機能の多くがあらゆるIoTプラットフォーム上に標準的に実装されつつあり、「IoTプラットフォームの機能」だけでソリューションの差別化を行うことは難しくなってきている。このため、多くのベンダーが新たな差別化要素を模索すべく「用途/シナリオ特化型IoTソリューション」と「共創を支える人材/組織変革」の2つの領域における取り組みを強化している。
しかし、これらの差別化戦略によって企業のIoT活用が広がったとしても、そこで活用されるデータが企業の特定部門にサイロ化されていては、大きなビジネス価値を生み出すのは困難だ。IDCでは、IoTの生み出す価値を最大化する上で、企業内部のデータに対して企業外部のデータを可能な限り組み合わせて活用すべく「データエコシステム」を形成することが必須とみている。
ここでいう「データエコシステム」とは、企業がIoTプラットフォームを通じて収集するIoTデータや、基幹系システムなどに蓄積しているデータなど、企業内部におけるさまざまな1stパーティデータを、外部の2ndパーティ/3rdパーティデータと掛け合わせ、新たなビジネスモデルや収益モデルを創出すべく形成するステークホルダーの集合体を指す。
現在、「データエコシステム」を構成する要素の中で、企業が外部データの活用を推進するためのソリューションや活動として、「データ取引基盤」「データ流通推進活動」「Data as a Service」の3つが広がりつつあるという。IDCでは、短期〜中期的には、IoTデータをオンライン、オフラインマーケティングのデータとともに取引・流通することで、企業がCX(Customer Experience)を飛躍的に向上させる事例が急速に増加し「データエコシステム」の市場成長をけん引すると見込む。
また、企業のIoTを活用したビジネス競争がレッドオーシャン化する一方、外部データを活用して新市場を創造するデータエコシステムの世界には、ブルーオーシャンが広がっているとしている。「ベンダーは『用途/シナリオ特化型IoTソリューション』の提供や、企業との共創活動を、データエコシステム形成を前提として進めるべきだ。IoTに取り組む企業の経営層のビジョンやマインドセットを見極め、啓蒙活動やコンサルティングを通じ、データエコシステムの世界に引き上げる努力を進めなければならない」(IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣悠太氏)という。
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