また、日立製作所のモーターメーカーとしての知見を基に開発した予兆診断アルゴリズムは、モーターの軸受型番や極数に関するプロダクト情報と電流データから劣化特徴量を抽出して、独自開発AI(人工知能)に基づく異常度の算出までを行う。正常データを1カ月程度収集すれば、その後は自動的に異常度を算出して故障の予兆診断を行ってくれるので、導入から立ち上げの期間も短くて済む。一方、新たにセンサーを設置するタイプの予兆診断ソリューションは、ビッグデータを集めて特徴量の探索を行い、統計的なアプローチに基づく特徴量の抽出まで求められるので、1〜2年の時間がかかる場合もある。
今回の予兆診断ソリューションを用いれば、CBM(Condition Based Maintenance)が可能になり、使用期間などを基に行うTBM(Time Based Maintenance)で起こりがちな過剰メンテナスを抑制できる。また、鉄鋼プラントであれば億円単位の損失をもたらしかねない計画外の突発的な設備停止を防止しやすくなる。ただし、今回のソリューションで分かるのは正常範囲内からの逸脱度合いとなる異常度であり、余寿命の算出までは行えない。「メンテナンスで交換した部品の状態などのデータを分析することで、そういったことも可能になるだろう」(齊藤氏)。
ソリューションの提供価格は、初期導入コストを除いて、年間サービス使用料が最小構成で数百万円から。1台の予兆診断アルゴリズムを組み込んだサーバで、400〜500台のモーターに対応できる。
鉄鋼制御システムの日立グループ製モーター向けへの拡販が順調に進めば、順次適用範囲を広げていきたい考えだ。拡大する範囲は一般産業機器や社会インフラといった用途、日立グループ製ではないモーター、海外への拡販、軸受以外に起因する不具合への対応など多岐にわたる。
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