製造業にとってのソフトウェアは、もはやハードウェアの付録ではない。既に主要な事業戦略の柱となっていて、製品に付加価値を与えることを可能にする。世界的自動車メーカーの1つであるフォルクスワーゲン(Volkswagen)グループのCEO、ヘルベルト・ディース氏が、2019年に開催されたあるモーターショーでの衝撃的な発言が波紋を呼んでいる。
クルマの差異化はソフトウェアによるところが大きくなります。われわれはソフトウェア企業にならなければなりません
自動車はインターネットに接続され、徐々にインターネットデバイスとなりつつあるのはIoTにおいて想像の範囲内ではあるだろう。しかし、自動車メーカーがソフトウェア企業になる必要性について、その理由を同氏が自ら明らかにしている。
ソフトウェアが、今後の自動車におけるイノベーションの9割を占めるようになります
これからの自動車のイノベーションにはソフトウェアが重要になってくる、だからフォルクスワーゲンはソフトウェア企業になるというのだ。
極端ともいえるその言葉から垣間見える世界は、次世代のクルマはソフトウェア中心となる時代であり、それはもうすぐそこまで来ている。
ソフトウェアによって安定した収益を得るアプローチに注目が集まっている。それがソフトウェアのサブスクリプションだ。ソフトウェアのサブスクリプションはサービスビジネスの一つとして多くの企業が取り組んでおり、実際に成果を上げている。この新しいライセンスモデルによって、多くのハードウェアメーカーはビジネスモデルの転換を進めている。
シスコシステムズはかつてハードウェアメーカーだったが、従来のハードウェアの売り切り型ビジネスからソフトウェアによるサブスクリプションビジネスに移行している。シスコシステムズの2018年第1四半期の売上高によると、ソフトウェア収入は18%も増加しており、サブスクリプション型の収入はソフトウェア全体の売上高の57%にも達している。現在ではソフトウェアとサブスクリプションがシスコの成長の原動力となっているのは間違いない。
また、フィリップスは医療機器メーカーから総合ヘルスケアカンパニーへと大きな転換を図っている。その中心的な役割を担っているのは間違いなくソフトウェアであり、医療機器に搭載されているソフトウェアとライセンスモデルは目覚ましい進化を遂げている。
サービスビジネスは従来のハードウェアの売り切りモデルとは異なり、利益率に圧倒的な違いがある。それがビジネスモデルの転換を後押ししている理由の一つだ。
例えば、サービスビジネスを導入している外資系の医療機器部門の営業利益率は17%前後であるのに対し、日本の医療機器メーカーの営業利益率は4%程度だ。この圧倒的な収益力の違いは従来の売り切り型のハードウェアビジネスのままなのか、それともソフトウェアなどを活用したサービスビジネスに注力しているかの違いである。
サブスクリプションモデルは、ビジネスとしての売上予測が容易で、安定した収益基盤を構築できるのがメリットだ。アドビ(Adobe)やマイクロソフト(Microsoft)が導入したことによって、ソフトウェア製品では既に中心的な収益モデルとなっている。そのサブスクリプションモデルはソフトウェアだけではなく今ではあらゆるビジネスでの導入が進んでいる。今後、ソフトウェアが中心的となっていく製造業において、サブスクリプションモデルの導入が進むことは火を見るよりも明らかだ。
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