今回のPossiプロジェクトの最大の特徴は、京セラ、ライオン、ソニーという大手企業3社が関わるプロジェクトでありながら、クラウドファンディングを行うまでの事業化プロセスを9カ月間という短期間で立ち上げられたことにある。
ソニーが社内向けに推進してきたSAP(Seed Acceleration Program)を、社外にも開く形で2018年から展開を始めたのがSSAPだ。京セラからソニーに参加の打診があったのが2018年8月。そして同年10月には、Possiの基本コンセプトとなる「圧電セラミックスで音の鳴る歯ブラシ」という事業アイデアを持つ、京セラ 研究開発本部 メディカル開発センターの稲垣智裕氏が派遣され、ソニー Startup Acceleration部の宮崎雅氏とともに事業化の検討を始めた。
3児の父でもある稲垣氏は「子供の仕上げ磨きをしっかりやるのはとても大変だ。この大変さを、京セラの圧電セラミックス技術で解決できないかというアイデアから始まった」と語る。アクセラレーターとして支援した宮崎氏は「アイデアはいいが肝心の歯ブラシというピースが足りなかったので、トップ企業であるライオンに協力を打診した」と述べる。
この打診に応えたのが、2019年1月からプロジェクトに参加したライオン 研究開発本部 イノベーションラボの萩森敬一氏だ。「面白いアイデアだと思ったし、新しいことをやるイノベーションラボとして、技術的にチャレンジが求められるのを含めて参加の意義を感じた。何より、稲垣氏の熱い情熱に感じ入るものがあった」(萩森氏)という。
ただし、大手企業3社が関わってしまうと「そういった場合話がまとまらないこともある」(宮崎氏)。ここで、プロジェクトメンバーが強く意識したのが「顧客視点を重視した意思決定」だった。
今後、クラウドファンディングが成立した場合には、正式に商品化としていきたい考えだ。支援者からのフィードバックを基に、現在の仕様のまま販売するか、仕様変更を加えて販売するかを決める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.