今回の法改正には、手続き上の負担緩和につながるものも含まれる。まず、一物品の考え方だが、長らく1意匠1出願(1物品に付き1つの権利)が原則となっていた。そのため、容器の中にモノが入っている状態は登録できず、必ず単品ごとに登録する必要があった。「これを受け、社会通念上一体であれば登録できるよう審査基準が緩和されている。例えば、容器付きゼリーや容器付き固定のりなど、容器と中身が一体となったデザインについても意匠登録可能になった。ただし、お中元やお歳暮などのように複数の物品を1つの箱に納めているセット物の意匠については、今回登録対象から見送られているので注意が必要だ」と布施氏。
その他の改正については、光の意匠、図面要件の緩和、複数意匠1出願などが挙げられる。これらの中で唯一保護対象の拡大に近いのが、光の意匠登録である。「従来、物品のみにしか意匠登録が認められていなかったが、今回の改正により、“点灯により模様または色彩が表れる場合”は意匠として認められるようになった。これまでは光を消した状態で、その形として意匠登録をしなければならなかったが、この改正により、自動車のヘッドランプや照明器具などの“光”についても意匠登録が可能となった」と布施氏は説明する。
その他、6面図ではなく意匠の創作性が分かれば図数などは問わない。物品全体を表さなくてもよい。出願意匠以外の物品(表現上必要な場合)を図示してもよい。1意匠1出願ではなく、同一出願人による同時出願であれば複数の意匠を申請してもよい、といった手続き上の緩和が図られている。
法改正の施行時期については以下の通りで、既に施行されているものもあるが、今回特に大きな変更となる画像、空間デザインの保護に関しては「遅くとも2020年5月17日までには施行されるだろう」と布施氏は述べる。
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