電通国際情報サービスがシステム工学的に故障予知にアプローチする考え方「PHM」に関するイベント「PHM Conference 2019 in JAPAN」を開催。2018年に続き日本で2回目となる同イベントの開催に合わせて、2019年3月に告知と募集を開始した「PHMC2019データ分析チャレンジコンテスト」の結果発表を行った。
電通国際情報サービス(ISID)は2019年6月11日、システム工学的に故障予知にアプローチする考え方「PHM(Prognostics and Health Management:故障予測と健康状態の管理)」に関するイベント「PHM Conference 2019 in JAPAN」を開催。2018年に続き日本で2回目となる同イベントの開催に合わせて、2019年3月に告知と募集を開始した「PHMC2019データ分析チャレンジコンテスト」の結果発表を行った。
同コンテストでは、国内製造業におけるPHMの普及を目的としているため、「所属勤務先が日本の製造業であること」という参加資格を設けた。2019年5月10日までの応募受付終了までに47の個人とチームがエントリーし、34人がデータ分析結果を提出した。
コンテストの課題は「航空機エンジンの残寿命予測」だ。ある航空機運用サービス会社が課題のサービスに必要なアルゴリズムを開発したと考えており、そのためのデータとして、260機分の航空機エンジンの履歴データがある。コンテストでは、この履歴データを用いて、現在監視している100機の航空機エンジンの健全性を評価し、残りのフライト数を正確に予測するモデルを作成することになる。なお、コンテストに用いるデータセットは、NASAが公開しているものを用いている。
コンテストの評価基準は精度だ。実際の残フライトと予測した残フライトとの差を誤差とし、その平均絶対誤差を精度として評価しており、数値が小さいほど精度は高い。そして、データ分析結果は1日につき1回までサブミットすることができ、その成績をランキングとして毎日更新することにより、コンテスト期間中の参加メンバーによる切磋琢磨を進められるようになっている。
なお、コンテスト参加者はハンドルネームで登録されており、日々のランキングなどで成績とともに表示されるのはこのハンドルネームだ。所属企業や役職、本名などを公開しないことで、国内製造業の技術者が参加するハードルを下げた格好だ。
コンテストの結果発表では、成績1位と2位の参加者が表彰された。1位のK_mat氏は評価基準となる精度が14.36、2位のohsamchan氏は14.55となった。なお、精度が15以下になったのはこの2人だけであり、モデル解説を担当したPredictronics CTOのデビッド・シーゲル(David Siegel)氏によるモデル構築例の精度である14.65も上回っていた。
1位のK_mat氏は「私はただの機械系エンジニアで、機械学習は趣味でやっているだけ」と自己紹介した後、「3カ月前までプログラムもできない“ずぶの素人”だった」と衝撃の告白。そして、「これからの時代、データを使うことを前提としたモノやシステムの開発が必要になる。最近は、学ぶだけでなく実践する環境も簡単に用意できるので、まずはPythonをインストールするところから始めてみては」と提案した。
2位のohsamchan氏は、自身が日本精工 コア技術研究開発センターの吉松修氏であることを明らかに。主業務は軸受の音響・振動計測や信号処理、軸受損傷診断などである。データ分析コンテストは初参加で、「データ分析はまだまだ勉強中」(ohsamchan氏)だという。
両氏ともデータ分析の専門家ではないにもかかわらず高い成績を収めたことから、製造業に所属するエンジニアのデータ分析適正の高さを示す結果となった。
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