「現場」「完璧」「集団」主義が示す日本のモノづくり力モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)

» 2019年05月24日 11時00分 公開
[長町基MONOist]
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「TQC」への取り組み

 完璧主義と集団主義が具体的な形となったのが「TQC(トータルクオリティーコントロール)」だ。その中には「全社運動」から始まる、声出し確認やQCサークル活動など日本独特の取り組みがある。住友電気工業でも2002年から、工場内をピカピカに清掃し、良い製品を作り、人材を育成するという「ピカピカ運動」を世界の生産拠点で実施している。

 また、トヨタ自動車の提唱するコンセプトである「自働化」を奨励。「現場を大事にし、完璧主義を目指す1つの具体的な活動だ」と西田氏は語る。異常が起これば設備を停止し、その段階で原因を徹底的に追求し、その繰り返しにより、不良ゼロと再発防止を目指す。チャレンジ、コミュニケーション、コミットメントの3つの指標を決め、「不良ゼロを10日間連続で実現すれば、そのラインを不良ゼロラインに認定する」ということを目指して挑戦を続けている。現在までに全世界で3200ラインが1度以上はこの目標を達成したという。

 また「改善」も世界で通じる日本語であり、そのポイントを西田氏は「成果の大きさではなく、より多くの事実を把握できるかだ」とする。困難な状況に陥ることで知恵や力が発揮される。また、状況を共有し見える化できることで周りの人が助けてくれることもあるという。

 西田氏は「改善は無限であり、世界に誇る日本の文化である」と位置付けている。一方で「日本は、改善は得意だが、革新はできない」といわれることがあるが、西田氏は「改善無くして革新はできない」と断言。「今そこにある事実をつかんで改善に結び付けることができるのが強い現場である」とし、強い現場に基づくモノづくりこそ、日本が世界に誇れる文化である」と結論付けている。

海外比率98%のワイヤハーネス生産

 続けて同社のワイヤハーネス製造での事例を紹介。同製品の生産は現在98%が海外で行っており、主に人件費の安い地域で生産している。これは、日本の生産拠点における技術開発、スキル指導、リスク対策などのマザー機能が果たせないためだ。「日本での生産比率を引き上げたい考えもあるが、これにはコスト対策を行う必要がある」と西田氏は語る。

 今後、自働化と共に自動車メーカーとの協業により生産形態の革新(必要な時に必要な量だけ作ることによるムダの削減)なども検討するなど、コスト削減に取り組む方針だ。このうち自働化については既に進行している。現状は、加工と検査の工程は自働化が進んでおり「今後は組み立て工程の自働化を進めていく」(西田氏)としている。

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