ダイハツ工業は「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」に出展し、エンジニアの技術伝承をテーマに、1968年開催の日本グランプリ GP-Iクラスで優勝したレーシングカー「ダイハツ P-5」を展示した。
ダイハツ工業は「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」(2019年5月22〜24日、パシフィコ横浜)に出展し、エンジニアの技術伝承をテーマに、1968年開催の日本グランプリ GP-Iクラスで優勝したレーシングカー「P-5」を展示した。
今回展示されたP-5は、同社の技術研究会に参加する有志の従業員らによってレストアされ、実際に走行可能になったもの。「P-5の優勝から50年という節目に、よそに渡っていたP-5のエンジンを譲り受けることができた。2018年内に何とか復活させようと、技術伝承を目的としたレストア作業が始まった」(同社説明員)。
P-5がレーシングカーとして活躍したのは約50年前のこと。その後、(経緯は不明だが)エンジンがよそに渡ってしまい、走行できない状態のP-5が倉庫に眠っていたが、約10年前に展示を目的にボディーペイントなどを行い外装を整え、以降は同社の見学施設「ヒューモビリティワールド」で展示されていた。
そして、後の調査でヤマモト自動車(京都府綾部市)というクラシックカーを中心とした自動車販売店がP-5のエンジンを所有していることが分かり、「ダイハツの技術を次の世代に継承したい」という技術伝承に対する熱い思いに共感してくれたヤマモト自動車 社長の山本勝一氏の好意により、エンジンが約50年ぶりに戻ってきたという。
「昔の先輩方が作ってきたエンジンをしっかりと理解し、それを直し、エンジンの仕組みの理解を深めることにつなげることができた。若手技術者はもちろんのこと、ベテランのメンバーにとっても“技術を教える”ということが勉強できた。こうした経験を現代、そして将来の自動車開発に役立てていければと思う」と同社説明員は語る。
レストア作業は勤務時間終了後に行われたため、完成まで半年以上かかったという。同社技術研究会は、参加メンバーが部署の垣根なく横断的にさまざまな技術を学んでいくことを目的としており、今回のレストア作業もベテランから若手までの有志メンバーが集まり、協力し合いながら自身の技能向上につなげていったという。
エンジンの修復には、一部残されていた紙の図面も参考にしつつ、現代のエンジン設計の要素もうまく取り入れながら、できるだけ当時のエンジンに近づけていった。また、足りない部品や老朽化して使いものにならなかった部品なども幾つかあり、それらは一から製作し直したそうだ。「とにかく、いろいろな壁にぶつかり、失敗を繰り返しながら取り組んできた。そのたびにメンバーで議論し合いながら問題を1つずつクリアしていった」(同社説明員)。
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